音楽を聴くだけで場面がはっきりと思い浮かびます。少し懐かしい響きが感情を静かに、そして徐々に大きく揺さぶります。この音楽があったからこそドラマ全体が豊かな表情を持ったと言えます。楽曲としての優秀さというよりは、人の心に語りかける音という言葉のような気がします。静かな部屋で聴いているとなぜか心が暖かくなるように感じました。
正しいことをしようとしたために脱藩した男。
その男は妻と一緒だった。
一人の男に刺客としての指令がくだるが、二人は
親友同士であった。また脱藩した男の妻は
刺客の妹でもあった。
武士という世界では上からの命令は絶対。
自分の思いを殺して、脱藩した男を追う。
話のなかで、すごいアクションがあるわけでもなく
笑いもお色気もあまりありません。
その分、刺客の男と一緒に小さい時から育ってきた
もう一人。
3人の人間模様が、過去の回想シーンから繋がっていくのは
切なく、そして引き込まれていきます。
なぜ 見つけたことを言わないのか。
なぜ 刀を抜こうとしたのか。
具体的な答えはなく、映像から感じ考えさせられて
いくことで 心に響いてきた作品でした。
河瀬直美の「萌の朱雀」とかそっち系ですね。
ストーリーを無視して、ただ画面に流しているだけでも
ホッと癒されるα波的画像なので
ヒーリング音楽の画像版のようなものだなーと感じました。
ゆえに、役者の演技力とか構成技術とかそういうところに
あんまりつっこみを入れちゃいけない類の映画でもあるなと感じました。
基本が自然体のドキュメンタリーチックをベースにしているようなので
素直に画面を楽しむつもりで見るといいと思います。
「見ること」を強制していない疲れない映画です。
「真幸くあらば」と言うタイトルは、万葉集の有間皇子の「磐代の浜松が枝を引き結び真幸くあらばまた還り見む」と言う歌から引かれています。
それは、この本の主人公が南木野(榊原)淳と言う死刑囚であり、その「獄中養母」である榊原茜に出会うことにより、「死」までの限られた期間の「生」をしっかりと全うしようとする姿を捉えているからです。
更に、「解説」に丁寧に書かれている様に、「エロイーズ」「新エロイーズ」を踏まえた熱烈なラブ・ストーリーでもある訳です。
しかも、それぞれ宗教や身分と言う障害があるのに対し、本書は国家、権力と言う障害がある訳です。
従って、この本は単なるラブ・ストーリーではなく、「死刑」において国家が人を殺す権限がどこにあるのか?とか、死刑囚の人権の問題とか、様々な問題が投げかけられます。
宗教的にも、「殺人」が何故罪なのか?と言う素朴な疑問が投げかけられます。
戦争と言う場においては「国家」と言う名で「殺人」が正当化され、「死刑」と言う名で「国家」が「殺人」をするのと、どう峻別するのかと言う訳です。
様々な問題を提起しながら、主人公二人の秘密の往復書簡が交換される形で、この本は構成されています。
その書簡の間を繋ぐのは、教誨師である牧師が関係者との会談です。
榊原茜の正体が語られるあたりから一気に物語は急展開します。
このあたりの構成の上手さは、「新エロイーズ」の挿入の仕方と共に素晴らしいと思います。
日航機事故を追う新聞記者の話だということで最初は見るのがつらくならないかと思いましたが、 男らしい堤真一さんの演技に引き込まれていきました。 仕事をがんばっている男の人にお勧めしたい作品です。 同じような心境を経験された方もあるのでは…と思いました。
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