“甘い生活”はやはりフェリーニ一世一代の傑作であり、その後の映画の地平を大きく斬り拓いた画期的な作品だったと思います。 この映画のスタイルを模倣した作品はその後無数に作られ、現在でも作られ続けていますが、そのアイデアの革新性とテーマの大きさにおいてこれを凌駕する作品は未だにないと思います。
まずこの作品には起承転結のストーリーというものがありません。 それよりも同じ登場人物たちが繰り広げる複数のエピソードを繋ぎ合わせて、そこから一歩距離を置いて見ると作品全体のテーマがパッチワークのようにして見えてくる−という構成になっています。 こういう手法は前例がないわけではありませんが、はっきりとそれを意識して映画を作っていった監督としてフェリーニの右に出る人はまずいないでしょう。 彼がそのパッチワークで描いてみせたテーマはズバリ、大量消費社会に生きる私たち人間の姿−その不安、滑稽さ、不可思議さそのものだったのだと思います。 作家志望なのにゴシップ記事を書いてそれなりに甘い生活を楽しんでいる主人公。 演技力ゼロのグラマーなスターに群がるパパラッチの群れ。 身を焦がす愛に生きたくてもそうなれない宙ぶらりんなセックスライフ。 成功しているように見える登場人物の原因不明の自殺。 心は空虚でも街に出るとそこは夜毎のドンチャン騒ぎ。 宗教ももはやエンターテイメントの一種。 この内容を1960年という時点で映像化して見せたというのはまさに天才のひらめきだったと思います。
ラスト、海辺にうちあげられた醜悪な怪魚を見つめる主人公に、天使のような少女が向こう側から何か一生懸命語りかけます。 しかし彼には彼女が何を言っているのか聞き取れません。 もはや天使の声は人間には届かないということなのでしょうかー。 映画の楽しみ方は人それぞれですし、古典的作品を見なければならない、などと言うつもりもないのですが、まだ未見の方がいましたら−これを見逃す手はありませんよ。
タイトルと帯の「どうやら夫は仕事ができないらしい」という文字に弾かれて買った作品。
笑いあり、両親の離婚という重いテーマもあり、日本中どこかにこんな家族がいるんだろうなーと思ってしまう。
個人的には「夫とUFO」「妻とマラソン」。ほろりと泣けるいい話。
今、家族間に会話が無いとか、マンネリ化してきた人が読むときっかけになるかもしれない。
ジャネットケイを聞いた事ない人でも絶対に気に入る一枚になります。ラバーズロックといえば、ジャネットケイ。誰しも一度は聞いた事があるLovin'Youから始まり、自然と心地よい気分に慣れる一枚です。
脳についてわかっていることは少ない。
この本では、
(A)脳についてこれはわかっている
→(B)だから、脳にはきっと、こういうことも言えるだろう
→→(C)だとすると、こういうことが有効なんじゃないか
という感じで、(A)事実→(B)仮説、(B)仮説→(C)著者の意見
へと、ずいぶんと飛躍がある本のように感じた。
ただ、言っていることは、全般的に、きっとそうなんだろうなーという内容が多い。
ただし、それが、本当に脳科学的に裏付けがされているのかと言えば、かなり疑問。
でも、
ときおり耳にする「ノーミスでがんばります」というのも、脳に悪い考え方の
例といえます。ます、「ノーミス」と言っている時点で、それは脳にとって
「ミスしないようにする」という”否定語”を含み、「ミスするかもしれない」という
考えを生みやすくするからです。(p.78)
これって、ほんと???
著者は、「〜しない」っていう否定語は、脳に悪い影響を及ぼす(p.48)らしいから
やってはいけないそうなのだが、その一方で、
私が救命救急チームを率いていたときは、この「目標を簡単に変えない」という
ことを徹底していました。(p.82)
とある。「目標を簡単に変えない」は、否定語じゃないのかな。
「食べ過ぎない」とか、「遅刻をしない」とか、そういう否定語が、脳をストップ
させたり、悪い影響を及ぼすというのは、ちょっと疑問なのだが。
ただ、この本の内容を、そのまま信じてしまうのではなく、参考程度に
読むのであれば、悪い本ではないと思う。
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