わずか3巻ですが変則的な連載のため、完結に5年かかったみたいですね。 それでもこうして出版されたのは嬉しく、ちゃんと最後まで面倒を見る出版社があるというのは、捨てたもんじゃないなぁと思いつつ。版元さん、ありがとうございます。 以下ネタバレありで。
この作品、ミステリー仕立てではありますが、現象・事物に対するトリックではなく人間の心の深奥、各人物たちが抱える闇を解き明かしていくという心理的なミステリーになります。 まぁそれはきづき・サトウコンビでありますから当然とも言えますが、3巻を読んだあとに1巻を読み返すと「到着点」を完全に見据えた構成です。構成に非常に隙が無い。この構成力の高さはサトウさんなのかな。
それはともかく、このお話は豊田乃亜という当たり前の幸せを与えられなかった女の子のかけた呪いが、他の人物たちをことごとく奈落に落としていったという物語でした。 それはまさしく魔女(山姥)の呪いであったわけですが、呪いは伝染しますが決断するのは本人です。幼き子供会の面々は、呪いをかけられながらも本人たちの選択により自ら奈落に落ちていったのです。 象徴的なのは大気と犬丸でしょうか。大気は豊田乃亜に誘導され、乃亜の首を絞めて乃亜の呪いを受けてしまいます。その呪いに従ってほとんど「自動的」に他者に干渉し、呪いを周囲に振りまく存在と成り果てるのです。この「首を絞める」構図、一話前の犬丸がミゾロギさんに「殺してくれ」と頼むのとまるで同じです。彼女は「大事な鶏の首を絞めるように」ミゾロギさんに殺されることを望んでいました。でもミゾロギさんにはできなかった。しかし犬丸は、たぶんそこで救われたはずです。「しょうがないなぁ」と言いつつ、犬丸とミゾロギさんの間には愛があったのだと思うのです。 その後は、犬丸からの贈り物である大気とミゾロギさんの世界です。ただ、大気は部品であり、実際には犬丸とミゾロギさんの世界なんですが。大気はミゾロギさんと犬丸の世界を補完するために、永久にその世界に従属するのでしょう。 何の救いもありません。きづき・サトウコンビは、ヨイコノミライやいちごの学校などを読むかぎり、「人生においてエンドマークの付く救いなどないのだ」という諦念があるのかもしれません。 ところで百合ものや少女漫画が好きな人は一度読まれてはどうでしょう? 私は犬丸のせつなさに今頭のなかがぐるんぐるんと揺れっぱなしです。このコンビの上質な少女漫画の部分は、きづきさんが追ってるんじゃないかと個人的に思っているのですが。
3巻は「夫婦」と「温度」にまつわる話が多数収録されています。
1、2巻に比べると内容はソフトになっています。
時が経ち熱の帯び方を忘れそうな夫婦
→セックスの仕方すら忘れそうで、一周まわって初心な感じで非常に良い。
浮気が原因で冷めきりそうな夫婦
→怒られてるうちが花とはよく言ったものだなと感心します。
熱は持ってるけどそれを上手く扱えない夫婦
→子供って見えないものが見えるんだなー…いつから見えなくなるんだろうか
などなどです。
ただ、3巻が1、2巻と違うのは、
全てのエピソードが、その一つ一つが意味あり気で温まれたり、ひんやりしたりで非常に楽しめる内容になっています。
特に「美佐江さんの、回数」「わたる君の、河」「チャコたんの、ニュース」この3話は非常に面白い。
「嘘つき」が落ち入るパラドクスとはどういうものか。 最後の二人の問答だけで片づけられてしまった気がする。
できれば登場人物の誰かに、読者をあっと言わせられるような大嘘をついて欲しかった。
そしてせっかく最低最悪の共有関係を築いたのだから、 想像の斜め上をいく、ぶっとんだ三角関係(プレイ)も見たかった。
それでもすっきりとは言わないけれども、きちんと完結してくれて良かった。 続編もやや期待。
毎話完結の屈折した愛を描く「セックスなんか興味ない」の第2巻。
おそらく(普通の)セックスなんか興味ない、という意味なんだと思います。
収録エピソードは
・ミミちゃんの、おまじない
・高畑君乃、教習
・辻口君の、自由
・サイノ君の、卒業
・舞子さんの、血
・武田君の、アメ玉
・雪乃ちゃんの、部屋
・ユウジ君の、教育
・エアラブ
好きだったのは、エアラブ。
自分に自信の無い男、ハンドルネーム「カスタード」君が、
ネットで知り合った大学生(実は高校生で処女。ハンドルネーム、まりも)に恋をしてデートをしますが、
自信のなさから、ファミレスに後輩を呼び出して
「実はこいつがカスタードだ」というウソを付いてしまいます。
初体験の人は、自分が恋した人ではなかった、と思い
最初はショックを隠せなかったものの、二人のコーヒーの飲み方で、まりもはその後輩は偽物だと気付きます。
そして、二回目のデートにて。
なんていうか、まりもの疲れきって悟ったような目と、ふところの広さが堪りませんでした。
プレゼントの渡し方が憎い。
逆に、エグかったのは
・雪乃ちゃんの、部屋
・ユウジ君の、教育
ですね。
ぶっちゃけ意味が分かりませんし、痛いのは嫌です。。
残酷エロス
あるじに恋したしもべに罰を
まさに帯の煽り文そのままの展開です。 誰があるじで 誰がしもべで 罰は罰なの?ご褒美?
衝撃のラスト(終わりません、3巻に続きます。) 私は衝撃が声に出ました。 その展開にぞくぞくしました。
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