良い点: ・謎の鯨の生態がまさにセンス・オブ・ワンダー。 ・登場人物がいきいきしていて良い。潜水艇パイロットの女性がのんべえの学者を毛嫌いする様には思わず笑ってしまった。
悪い点: ・イルカの脳が組み込まれた潜水艇が少し気持ち悪い。 ・悪役にイスラムテロリストを配したのはどうかと・・・いろんな意味で。 ・日本人で、イスラム教徒で、しかもテロリストとゆーのはかなり現実味がない。 ・襲ってくる理由が説得力なし。いくら狂信者だからって、こんなものを欲しがるかな?
結論:いろいろ辛口書いちゃったけど、すごく面白かったです、ホントに。
2071年、開発が進む火星で、氷の中から謎の生物の死骸が大量に発見される。考古学者の卵の若い女性主人公は調査のため火星に向かう。企業や各国の思惑が入り乱れる火星で、次々怪異現象が。主人公に迫る危機、彼女を守ろうとする謎の存在。ジョジョに明かされていく火星の秘密。陰謀・・・。
あかん。読み始めたら、止まらなくなります。
未来のネットワーク上での戦い(ウイルス、ワクチン、アバター、人工生命)が、逃げる/争うが、リアルに表現豊かに描かれています。
読み応え、満点です。ここまで、未来のコンピュータやネットワークが克明に示された本は、はじめて読みました。
また、火星のリアルな世界での戦闘、戦闘員たち、兵器、ネットワークやコンピュータの進化、火星の開発の歴史、コンピュータはどれだけ人に近づけるか、進化したコンピュータと人類の関係等、読みどころばかりです。
筋も面白く、食事中も読み続ける面白さでした。上下巻揃えておいた方が無難です。
本書は深海のパイロット、つまり潜水調査船のパイロットに焦点をあてた内容です。
もうその時点で☆5つに値すると思いました。
こんな内容のことは誰かが本として出版でもしてくれないと、一般人には知ることなんて絶対できないんですから!
深海調査船のパイロットは全世界で40人前後しかいないといいます(そのうち日本には20人前後もいるそうです)。
また、日本が持っている潜水調査船は「しんかい2000」と「しんかい6500」であり、この内しんかい2000の方は残念ながら予算がとれなくなり運航を休止しているようですが、しんかい6500は世界で最も深く潜れる調査船です。その名の通り、6500メートルまで潜れるそうです(4000メートル以上潜れる調査船は世界に五隻しかないのに!)。
このように、日本は深海探査において世界をリードする立場であるのにも関わらず、一般の日本人は深海探査について全く知りません。
その原因は深海探査についての一般向けの本がほぼ皆無だからだと著者は書いています。
そのため「深海へ人が行くということの、わくわくするような面白さや素晴らしさを改めて多くの人に伝えたい」と思ったことが本書を出そうと思った主な動機だそうです。
実際に、本書を読むとわくわくすること必至!
著者は3人いて、その中には元パイロットの方や学者の方もいるので色んな面からの話が読めますよ。
もちろん現役のパイロットの方の話もたくさんでてきます。
めちゃくちゃ面白かった!
深海探査に興味がある方は絶対にオススメできます。
リアルすぎてなんだか恐ろしく感じた。
物理世界と仮想世界の境界があいまいになった近未来。
物理世界に生まれた人間サヤはアバターを媒介して仮想世界にアクセスし、
仮想世界で生まれた「人間」である人工知能は生身の人間を「ウエットウエア」
として使い、物理世界にアクセスする。
物理世界も仮想世界もともに「現実」である。
はたして、人間と同じ思考プロセスを持つようになった人工知能は「人間」と
言えるのか?
人間とは、いったい何なのか。
そんな事を考えながら読みました。
’05年、「SFが読みたい!」国内編ベストSF第4位にランクインした、藤崎慎吾の、構想に5年、執筆に3年を費やしたといわれる2000枚を超える大長編。
「2032年、奄美大島から与那国島にわたる南西諸島に、未曾有の地殻変動によって沈没の危機が迫る。」こんな予備知識で読み始めた。すわ『日本沈没』『死都日本』『深海のYrr』を彷彿とさせるパニック巨編か、はたまたハリウッド映画ばりの大災害エンターテインメントかと思っていると実は、テクノロジーや災害の悲惨さを超えたところを描ききった物語だった。
なるほど深海調査船<しんかいFD>をはじめとするハードウェアや、この危機を食い止めようと独自のISEIC(圏間基層情報雲)理論を元に6人の異なる分野の科学者たちが乗り出す。またそればかりではなく、進歩したさまざまな未来の科学技術・理論を興味深く読むことができる。
しかし物語の主人公は「色を聞いたり音を味わったりすること」ができる“共感覚”をもつ青年岳史と、与那国島で神の声を聞いたり、雨乞いの儀式で「本当に雨を降らして」しまうことのできたりする若い“ムヌチ(巫女)”柚である。彼らが‘神の遣い手’となり、島々を救おうと煩悶し、そして自らの幸せを願うのだ。最終的には科学者たちも彼らの“能力”に頼ることになるのである。そこには前述の諸作品にあるような政府や軍の関与やスケールの大きい凄惨な描写は最小限に抑えられており、伝奇小説の趣さえ漂う。
本書からは、藤崎慎吾の科学ジャーナリスト出身らしい豊富な知識と綿密な取材に加えて、日本古来の“神々の領域”に踏み込んだ豊かな想像力を読み取ることができる。
ともあれ本書は、リアリティあふれる近未来最先端の科学技術と、和製SFらしい“神がかり”とを融合させた大作である。
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