とにかく爆笑また爆笑。タモリとの対談などは、『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』に描かれているそのまんま。
赤塚不二夫氏の、破天荒極まりない、文字通り「身体を張った」幻のギャグ、『ムササビ』(ムサっ、ってところで途切れた)なんて
真骨頂です。
ただ、この本を読んで笑えるのは良いんですが、同時に必ず読んで欲しいのは、氏自身の筆による自伝。ここまでの破天荒さは、実は
『これでいいのだ』という突き抜けた想いの、いわば【光】の部分。その裏に潜んだ【闇】の部分を理解しないと、ただの馬鹿親爺
にしか見えないけれど、自伝に描かれているような、壮絶な満州体験を知らなければ、その闇の深さが理解できません。
紛れもなくこの人は天才だ、と思ったのは、点字によらずに、視覚障害者の方向けの「漫画」を創造して、彼らを笑わせよう、と考え
ていた、というところ。指先の感覚でなぞっただけで大笑いできる『立体漫画』。これが出来たら、ノーベル賞モノだったかもしれ
ない。脳科学者やら心理学者やらがワァっと騒ぐだろうけど、本人はそいつら前にしてベロベロに酔ってウンコしてみせる。そういう
突き抜け方がタマラナイです。
あの海千山千というか、人三化七みたいな柳美里でさえ、下ネタでオモチャにされてしまう。それでいて、ダニエル・カールとの
対談では、異文化論についてキッチリ論じて見せる。将に底知れぬ、惜しい方でした。
これでいいのだ―赤塚不二夫自叙伝 (文春文庫)
ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘
歌っているのは、一流のオペラや歌曲の歌い手で、いずれも端正な歌いぶりである。クラシックの好きな人向きかもしれない。
私がこの歌集を買う気になったのは、斉藤佳三の「ふるさとの」が、入っていたからである。母が、生前、この歌を台所でよく口ずさんでいたのを懐かしく思っていたが、改めて聴いてみて、胸が熱くなった。信時潔の「沙羅」が入っているのもうれしい。「海ゆかば」 (私は名曲だと思うが) のせいか、彼の歌をめったに聞く機会がないのを残念に思っている。
「カチューシャの唄」や「ゴンドラの唄」は、出だししか知らなかったが、今回、全曲を聴くことができた。何度も聴きたいとは思わないが、当時の人のものの感じ方に触れることができたような気がして、興味深かった。
立川談志がおそろしい。この本の主役は赤塚不二夫ではあるのだが主役を差し置いて立川談志が格の違いを見せ付ける。生きるとは。芸とは。「なんだろねぇ、わかりゃしないね」談志がつむぐ言葉には人には創造できない野に咲く花のような感慨がある。言葉のその先へ。
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