萩尾望都先生の作品は全てに注目していますが。 最新作であるこのお話も、難しいテーマの中に、描きたいと表現したいと思われるものが絵としても文章としても現れ、そしてそれがただ難しい言葉ではなく表現されているのが素晴らしいと思う。 終わり、と向かっていくときにも、ただの文章の羅列だけではないそれに加え、絵のポイントが新しく映えることに眼福を覚えます。 しかし、コミック派であるわたしがこの4巻で完結だと手にしたとき、全てが終わるのかと心配したのですが、それは全くの杞憂でした。
形式的にはSFミステリーと言って良いと思う。人の夢に入れる特殊能力者の主人公を中心に、バルバラと呼ばれる夢世界を持ち眠り続ける少女とその家族、若返りの研究を続ける老科学者とそれに関わる人々など、そうした人たちのそれぞれの物語がジグソーパズルのピースように提示され、解き明かさる様は興味深く、わくわくするような体験と言える。その世界の構築と登場人物の生涯の生成、展開する物語と結末への収束はドラマティックで日本SF大賞に輝く所以であろうと思われる。
その一方で、追われるように繰り出される流れの速いストーリー建ては、やはりいくらなんでもやりすぎという感がある。とくに、初めの1/4と最後の部分は目が回るようで、ちょっと辛いほどだ。さらに、もっと伏線を張っていればと言う惜しい部分も見受けられる。終わりが唐突で、読者が謎解きをする余裕がないのだ。あと1冊分、ページを増やして書き込めば、涙の止まらないような傑作になったのではと言う気もする。また、多くの登場人物が揃いも揃って常時興奮状態にあるようなところは、各人に個性がないというほどではないが、やはり惜しい、という気持ちになる。
リメイクはありえない。が、いまひとつ落ち着いた、大人の雰囲気を持たせられれば、文句なく至上の傑作となったように思う。
大和に乗船していたお爺ちゃんに出会ったことをきっかけにして、40年ぶりぐらいでプラモデルを作り始めて、すでに30隻近く、連合艦隊艦船を制作してきました。最近、他国の船を少しずつ、作っています。このドイツ駆逐艦セットは模型店で見たことがありませんでしたが、たまたま中古店で安価だったので買ってみました。2隻で千円以下なので、お買い得感があります。 資料もほとんど持ってないし、私自身にこだわりもないので、ほぼ素組みですらすらと組みました。設計図には、この駆逐艦に関しての解説が書いてあって勉強になります。組み立て図は大変見やすいのですが、前期型と改修型を間違えないように気をつける必要があります。艦橋の周りにゴムボートが着いていたり、甲板上の構造物も連合艦隊とはかなり違っていたりして、興味深いです。 錨が大人しく甲板上に上がっているので換えたかったのですが、細い錨鎖を削って取り替える自信がないので断念。唯一、ホースリールが蒲鉾みたいだったので、ピッとロード製の部品と交換しています。あとはマストも含めて、すべて素組みです。筆塗りで、迷彩色も止めました。 ともかく艦船作りは楽しいので、その楽しさを少しでも多くの方々に知って頂こうという気持ちだけで、アマゾンに作品を掲載しています。稚拙ですが、よろしかったら参考に見てください。みなさんは、きっと、もっと上手に作れますよ。
最新のリマスターによるバルバラの2枚組ベスト。しかし、2枚ということは評価したいが、「廉価版」のシリーズであるため、歌詞対訳もなく、大まかなアーティスト紹介があるだけ。これではあまりに不親切であろう。曲目を見てこちらにしようと思った人でも、「1枚ものの方が良かった」なんてことになりかねない。だから、本当は減点2でも良かったのだが、音が良かったことと、収録曲の魅力で、1ポイント回復。結果、星4つとした。実際、フランスのショップでも「逆輸入」してるぐらいなので、内容的には、本国のお墨付きと言える。国内盤とはいっても、「輸入盤」の感覚だ。 1枚ものにない曲を拾ってみると、「愛していると言えない(Je ne sais pas dire...)」('64)、「マダム(madame)」('67)などは切ない名作。他の曲も、耳に馴染み易く、「リヨン駅」('64)や「楽しいクリスマス」('68)などは、どれだけ聴いたか分からない。個人的には、このディスク以外にも、お薦めの曲なら山ほどある、と言いたいところだが、それではキリがなくなる。 「愛の語らいにはいつも」('66-'67)は、通常のスタジオ盤や、ボビノ・ライヴ'67盤と違い、'66ハンブルグ録音とある。試演だったのか、私も初めて耳にした録音である。「今朝」('63)は、「いつ帰ってくるの」同様CBS録音だが、これは、3種あるうちの1つで、決定盤にはならなかったものである。(注:'02発売の新全集によれば、この「愛の語らいにはいつも」は'65年9月1日のもので、'66ハンブルグはまた別の録音である。「今朝」は'65年2月9、10日のものとされているが、私が聴く限り、旧全集収録'63年3月26日のCBS録音と同一のものに思われる。-'11年8月8日) ディスク2の最後の4曲は'80年代以降の作品。「月に向かう馬」('81)は幻想的、「ゴーギャン」('90)は、画家と同じ島に眠るジャック・ブレルにあてた手紙。共演した映画での役名レオニ(「Franz」-'71より)を署名代わりにしている。「シダムール・ア・モール(愛の死)」('87)、「ミモザの島」('86)は、ともに'80年代の彼女の最高傑作。後者で「合いの手」を入れているのは、他ならぬジェラール・ドパルデューであるが、私個人の意見としては、前者と同じ録音(シャトレ'87盤)の方がパフォーマンス的に優れていると思うので、それがちょっと残念なところである。
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