夜行観覧車
ごく普通の人の心に宿る闇を語らせると、読んでいるほうが眉をひそめたり
いらだってくるほどの表現力を発揮する作者の力量は相変わらずだと思います。
ささいな掛け違いで人の、家族心の距離が離れていく様は、他人事では無い
現実感をもって読者に迫ってきます。
ただ最後の結末が少々唐突で、あそこまで壊れかけたものがそう簡単に
和解できるものなのか、という疑問が残ったため★4つとしています。
やはり家族を題材にした小説は、身近な題材であるがゆえに難しいものなのでしょう。
力のある作家であることは間違いないと思います。次作も追いたいと思います。
つぐない [DVD]
クラシックな情景とBGMの中で、動と静を使い分けたストーリーを幾重にも折り重ねるように展開していく戯曲が柔らかくマイルドにこころの中に浸透してきます。
思い起こせば大なり小なり傷つきやすい多感な頃に嫉妬したり似たような感情経験があるのではないでしょうか。
この作品は骨肉の争いをするものでもなく、虚偽により罪を犯したものに対して感情が高ぶるものでもなく、虚偽により引き離されたものたちに悲劇的な感情がエスカレーションするものでもないのです。
それでいて、観終わったあとにやってくるもの、この作品が伝えた切ない想いがこころのどこかに余韻としてずっと残ってしまうでしょう。
ドラマの中でみなまでをはっきりと語らず、答えは観ているもののこころの中にあるといったポエム的な演出により、それぞれのシチュエーションで絶えず余情のふくらみがあるのです。
名作だと思います。
告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
作品は主な登場人物の手記として大半が描かれていますが、自己愛の強さばかりが目立ち、偽善的な大人が思春期の子供たちと同レベル、もしくはそれ以下のように感じられました。
思春期の心の闇を描いている点では、高評価なのは理解できますが、「大人」がいない世界に はがゆさを感じました。
他人の痛みを鈍感な人は増えていますが、それに対して同レベルの考えで審判を下すのでは
救いようがないと感じました。
贖罪 (ミステリ・フロンティア)
ミステリ、を期待して読むと駄目だと思います。
偶然が偶然を呼び、さらに偶然と偶然がつながる形なので、いくらなんでも……とげんなりしました。
告白と似た短編連作風です。
話の展開は読めるし、かといって殺人犯の推理を楽しめるでもなかったです。
ご都合主義的なテレビドラマを小説にした感じなので、それが気にならない人はおもしろいと思います。
放熱への証
このアルバムが発売された時には彼はもうこの世にはいなかった・・・。最期の「ママ,セイ・グッバイ」はまるで尾崎がファンに向けた最期のメッセージのようだ。この次の作品が聴けないとは実に悲しいことだ。