佐川光晴「ぼくたちは大人になる」を読了。青春小説の傑作といっていい出来栄えです。本当に良い作家です。作品全てにはずれがありません。本作も青春の「正義感」満載で中年読者が照れながら読んでしまう描写満載です。でも青春小説はそれでいいのです。その照れは、青春時代を通過してきた大人たち共通の照れなのですから。でも青春真っ盛りの高校生達が読んでも面白いでしょう。でも主人公が出来すぎの感はありますが。。。因みに三浦くんは私の後輩になりました。
正直、この作品も作者もまったく知らずに読みました。率直な感想、素晴らしい作家に出会えた、と思いました。純文学スタイルですが、読者を引き込ませる文体で、久しぶりに文体をじっくり味わいながらよむ作品に出会えたという感じです。近い将来ブレイクの予感を漂わせる作家だと思いました。
「おれのおばさん」の続編。前作の主要登場人物の3人が語り手となり、それぞれの視点による3つの中短編から構成されています。前作の書評でも指摘されていましたが、本作品では語り手の内面描写にさらに重きがおかれ、そのために物語としては物足りなく感じました。けれども作者のメッセージには全面的に共感できます。本文から引用します。「ここではないどこかに理想的な世界があるわけではなく、人生にはこれを達成したらOKという基準もない。そうではなくて、今ここで一緒に暮らしている仲間たちのなかでどうふるまうかがすべてなのだ。」
本作品は主人公たちのさらなる成長への前奏という感じもして、どうしても続編が読みたくなりますが、この作家にはすでに「ぼくたちは大人になる」という、(境遇は異なりますが)別の高校生を主人公とした作品があり、これは物語性もすばらしく、私の一押しです。私事になりますが、私はこの作家とほぼ同年代なのですが、今後もこの作家の新作を読みながら、自分の子供と共に成長していければと思いました。
屠殺場というのはなかなか外部から見ることができない。特に、生きている牛が枝肉になるまでの具体的な作業の詳細をこのように科学的、客観的に自らの人生観も含めながら淡々と記述された文章は感動的であった。
写真は事情もあり添付されていないが、イラストは非常に味があった。
「こうして僕は猟師になった」
という本とも共通するが、獣を解体して肉として食べることは命をもらうことであり、自分が食べる食肉を大切に思う気持ちが強くなった。
本書に掲載されたツキノワグマの解体写真は白眉である。
文章よりもなによりも、マタギが熊を大切に扱っていることを
訴えかけてくる。
但し、マタギと自然とのかかわりや、食文化へを守ることへの
文章による言及は、通り一遍で興味を削ぐ。
筆者も本文で述べているが、マタギの歴史等には
あまり興味がないそうだから、ならば、
本業のカメラマンとして、もっと写真を多くして、
それにキャプションをつけていくというような体裁の
書籍にするべきだった。
編集者の怠慢である。
しかし、解体写真を見るためだけに、
書籍代を投じる価値のある本ではある。
|