阿部定事件をモチーフにしながらも、舞台は時空を超えて訳の分からない展開を見せる、前衛ポルノ(この表現自体が、前時代的か?)ですかね。とどのつまりは、タイトル通りに“情念”の世界を描いた作品なのだと思います。
何かと言うと屁理屈をこねくり回して、定と愛人の情事にチャチを入れてくる内田裕也ほかの敵キャラがおかしいですが、そんなのどこ吹く風で、脱ぎまくり、ヤリまくる、杉本彩の色情狂っぷりが相変わらず凄いです。
阿部定は、105年前の1905年5月28日東京は神田生まれの芸妓。
老舗の畳屋の娘として生まれて、入学する前から常磐津や三味線を習い、近所でも評判の美少女だった彼女が、やがて歴史に名を残す≪毒婦≫になるのは何故か?
ひとりの、本来なら平凡に生きる運命にあった女性が、あの事件を起こしたことである意味では時代の寵児となって、生涯その悪女の烙印に翻弄されて苦渋の一生を送ることになります。
ことの顛末は、1936年、彼女が31歳のとき、不倫で愛人関係にあった石田吉蔵を、サディズムとフェティシズムの果てに性器を切り取ったあげく死に至らしめたという事件を起こしたことです。
彼女としては、ただ単に愛した相手を他の誰にも渡したくない、独占したいというしごく当り前な感情から、そして快楽を追求するあまりに、ことの最中に首を絞めたりして“死んでしまうような恍惚感に到る(石田吉蔵が)”ことの、双方の結果から、死んでしまった愛する人から躊躇なく大事なものを切り取ったという訳です。
やっぱりなんといっても、1936年という年に起こったということがすべてを運命づけていると思います。
この事件が5月18日。そのわずか3か月前には、あの歴史を揺るがす大事件の二、二六事件が勃発しています。
言い知れぬ不安とか鬱屈した雰囲気が充満していた、まさにそのとき、けっして喝采を浴びる明るいニュースではありませんが、世間の常識を逸脱した猟奇事件ではありますが、何か息苦しく覆っていた厚いベールをひきはがすような、一瞬ふたが開いて新鮮な空気がスッと入ってきたような感じがあったのに違いありません。
すべては、彼女が、16歳で初潮をむかえる2年前に慶応義塾の学生にレイプされたことから人生が始まったように感じたことの演繹なのか、それとも、父親から女衒に身を売られるような不幸な身の上を押しつけられたことからの必然の帰結なのか。
とんでもない、あるとき一瞬でも敢然と、自分の運命は自分のもの、どうあっても変えてやろうと思ったはずです。
記述日 : 2010年05月28日 11:15:14
宮下順子と言えば、
日活ロマンポルノで名を馳せた女優さんだけど、
もしも「ロマンポルノ」って言葉で
拒否反応示す人がいるとしたら
勿体無い話だよ〜〜。
ここでの彼女の肉体や演技ってのは、
私が考える定の「ずる可愛さ」に
かなりリンクする。
とにかく、宮下!
彼女に説得力がある。
その爛れた純情が身体の線に出ているんだもん。
特に、吉蔵を宿に残し、金の工面をする為に
「先生」に逢うくだりのシーンなんぞはね。
「実際、こうだったんじゃないの??」って。
阿部定作品として、お奨めです。
何にも知らずに友達が見たいからという理由でみましたがほんと良かった。 洋画で云うところの「アメリ」みたいなリズム感。 ただし内容はあんな薄っぺらいもんじゃないので、完全にこっちの勝ち! エロシーンを期待してはいけません。 でも、やってるシーンはこの映画の独特のリズムを生むおおもと。 冒頭から一つ一つのシーンの作りこみ様が半端じゃない。 リアルなところは本当にリアルだし、コミカルにすることろはとことんコミカル。 大道具とかセットとか、邦画は外国の映画に比べると見劣りする場合が多いけど、この映画に限ってはそんなことありません。 ちゃちいところは効果として利用してます。 黒木瞳こんな演技上手かったのかと思うほど役者いいです。他の人も。 とにかく使えるもの全ての効果を利用してます。 例えば、雨が降るだけで泣いちゃった。ネタばれになるかもしれないけど、良くないことが起こるときっていつも雨が降っていて、そういうことに気がついてきた後半の会話のシーンで、まだ何にも言ってないのに、雨が降ってるだけで先のことが予想されて何も意識してないのに涙が出た。 一見すると滑稽なんだけど。それが余計に切ないんだ。 でもなんつーか、、一般受けするものではないかも。 サブカル好きと自負する方にお勧めです。 一人で見るか、趣味の合う人と見るのが良いのではないのでしょうか? 好き嫌いがはっきり出ると思うので、そこんとこは気をつけにと楽しめないかも。。。 でもあたしは、日本にもこんなにいい映画があったのかと思うほどよかった。<P!>広告の仕方は失敗。 映画の題名、主題歌もセンス悪すぎ。 けどそんなことにはめげずに観てください。
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