キャッチャーとしてプロ選手を終え、その後はコーチ、はては監督と立場を変えながら野球を見てきた氏の体験談。各立場によって同じ見るという行為の中でも見えることの違いやその内容から起こす行動の役割まで変わってくる一つ一つが興味深い。スポーツに携わるプロでなくとも子を見る親御さんや少年チームを世話するおっさんにもお勧めしたい一冊。
いわゆる“江夏の21球”ドキュメンタリーものを期待していると肩すかしを食う。その9回の攻防はあくまで1シーンに過ぎず、近鉄ファン・応援団員であった筆者が、1979年のシーズン&日本シリーズをスタンドからの視点で熱く見つめた一冊だ。 試合展開を追いながら、自分もスタンドで近鉄を応援しているかのように感じる臨場感とリアルさは、実際に応援旗を振っていた筆者の視点ならではのもの。決して客観的な分析ではないし、近鉄偏重の視点でもあるものの、ヘンに大上段に構えていないだけに、古くからの近鉄ファンなら必ずや胸に熱いものを感じ、共感を持てることだろう。 当時は報道されたものの、その後はほとんど表面化することのなかった広島での近鉄いじめなどもリアルに描かれ、同年シリーズのサイドストーリー的な一面も。また、随所に挿入される筆者と西本監督との親交も、西本イズムに共感するオールドファンには興味深いところ。 ただ、“大阪近鉄”に生まれ変わる以前の近鉄が“大阪の人気球団”であった頃を思い起こさせる点には、今となってはやるせない思いを感じてしまうのだが…。
川藤、高井、山本(巨人)……と、野球好きならだれでも知っている選手を取り上げている。それぞれ個人成績が載っているが、先発時の成績は除外し、代打に限っての成績であるところがおもしろい。
本書に載せられていない、八木、永尾、八重樫、淡口、川又など地味な選手もいるので、第2弾が出されるのに期待している。
キャッチャーを初めてやる人からベテランの人まで、誰が読んでも価値ある一冊
今日現在の野球界における旬な名監督の生のインタビュー集といった構成です。
野村監督や星野監督、原監督といったスター監督ではない、玄人好みの監督人選がたまりません。
インタビューも直近で行われたようで、例えば日ハム梨田監督のインタビューでは昨シーズンから今シーズンにかけて、生まれ変わった中田選手や、凄みを増したダルビッシュ投手の話題が触れられています。
スポーツニュースや新聞からは読み取れない、各監督の野球観、人生観、組織論みたいなものが生の声で語られており、ますます野球が好きになります。
スポーツライターである筆者と各監督の信頼関係あってこそのインタビューと感じました。
ただし、内容は具体的な野球の話がほとんどで、野球に興味がない方にはさっぱりわからない内容ともいえます。
自身も名選手だった監督、選手時代は全くの無名だった監督、実業団の監督、大学の監督と様々な方が、違った視点から語っているのに、最終的には技術や能力だけでなく、「人間力」みたいなもの(礼儀や生活態度、姿勢など)に集約されるといった印象を受けました。
ドラッカーが語る「真摯さ」にも近いものを感じました。
目先の1勝が大切だが、同時に若手を育成したり、調子が悪い選手に復調のきっかけを与えなければいけない。
今年のペナントを狙いながらも、選手個人の人生までを考える。
監督は常に二律背反問題と向き合いながら、悩み、苦しみ判断を続けています。
しかも結果を出さなくては、翌年の仕事が無くなる崖っぷちの職業です。
企業経営においても目先の業績と人材育成/組織活性、もしくは短期目標と中長期目標という二律背反問題は常にありますが、まだまだかわいいもんだと思ってしまいました。
この本には登場しませんが、失敗した選手を怒鳴り散らし、ミスに対し感情を露わにする楽天の某監督は個人的には好きになれません。
そうでないと信じたいのですが、『選手よりも自分が大事』と感じてしまうことが・・・
一方、この本で登場する梨田監督の一言。
「寝坊するには寝坊した理由がある。バントを失敗すれば失敗した理由がある。サインを見逃したら見逃した理由がある。すべてに理由があるのよね。だから、そのわけをしっかり聞いてあげる。怒るだけじゃダメ。何か理由があるから、理由をまず解明してあげなあかん。それは何なのかと突き詰めていく」
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