ソ連崩壊後に広まったロシア人作曲家兼ピアニスト、カプースチン。彼の作品の中でもよく演奏会に取り上げられるエチュード集。8曲から成り、どれも秀逸である。しかも全体の構成が素晴らしく、8曲続けてもそれぞれの個性が際立ち、且つ流れもスムーズ。テクニック的レベルは高いが、超絶技巧といった感じではなく、アマチュアでも楽しめる曲集である(ただしノーミスを目指すのはかなり大変)。演奏しやすいのは、1、3曲目。個人的には6曲目が大好きだ。10度以上の和音も頻出するので、手の小さい人は音を省かないと(速度的にアルペジオにするとリズムが崩れる)無理だろう。
本書では、伸行くんの母親、辻井いつ子の著書とは少し異なる側面から、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール優勝までの軌跡が書かれている。
優れた能力を持ちながらコンクールでは不遇だった川上氏が、譜読みテープや選曲等で手間暇を惜しまなかった経緯が紹介されている。表紙にも「川上先生がいたから僕はピアニストになれた」と書かれているが、川上氏は伸行くんの「育ての親」と表現するのが適切なのではないか。
本書には、往復書簡「辻井伸行から川上昌裕先生へ」「川上昌裕から辻井伸行くんへ」が紹介されているが、良好な関係が反映されたこの文面も感激的である。但し、本書で写しとして我々が目にしているのは、墨字への「翻訳版」だ。
パートナーさえ見つかれば、さぞ楽しく演奏できるはず。ただ、かなり弾ける人でも初見でせーの!と弾けるレベルではない。(カプースチンだから当然ですが)意外と少ないカプースチンの2台ピアノ。貴重である。
以前、NHK-FM「名曲リサイタル」で聴いた演奏が忘れられず、カプースチンのこちらのCDを購入しました。川上氏の演奏の美しさにすっかり魅了されました。ピアノの録音状態もよく、川上ワールドとカプースチンの音楽世界の深さを堪能させてもらった1枚でした。
ピアノの練習を永続して続けていくための秘訣や、音楽関係の仕事に対する姿勢などなど、音楽と長いお付き合いをしていくためのノウハウが満載。今の仕事を極めるために努力することで道はおのずと開けてくるというメッセージは心に響く。
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