私が読んだのは、講談社文庫版。そちらには、「猫の舌に釘をうて」しか収められていない。光文社文庫版では、ほかの作品も掲載されているということだが、そちらは未読。
簡単に言えば、「猫の〜」は倒叙型・叙述型のミステリと考えてもらえばよい。ただし、ミステリに対して造詣の深い著者だけあって、色々な企みがほどこされている。謳い文句の“1人3役”だけが魅力なのではない。
ミステリにかかわること以外では、ワイルドやダウスンの詩、クラシック音楽、絵画、落語、東京の古い神社仏閣などに関する知識が次々に出てきて、当時の知的な流行を垣間見ることができる。また、現在では地名が変更されている可能性もあるが、“坂”のつく地名がかなり出てきて、東京が“坂”の街と言われていたことがよく分かる。警部補が『滝の白糸』について詳しく知っているのには、「あり得ないだろう」と突っ込みを入れたくなるが、それ自体も仕掛けなのかもしれない。ヒロイン有紀子の捉えどころの無さも魅力的だ。 匠の“技”がなせる一作。
まさかこの映画がDVDになっているとは思いませんでしたw
それだけ問題発言が多い映画ですが(笑)
思わず買ってしまいましたが後悔はありません。
この映画、一度見るとあっけにとられ二度三度見るとスルメのように味の出てくる
摩訶不思議な映画です。
殺人を喜々として語り己が犯罪哲学に殉じる天本英世さん演じる溝呂木博士と
飄々としながら映画の全キャラクターを手玉にとる主人公桔梗信治=仲代達矢の
死屍累々の対決が物凄いですww
巻き込まれて死ぬのはどうしようもない殺し屋の悪人ばかりなので良心も痛みませんw
どんでん返しに継ぐどんでん返し。
最後の最後まで気が抜けません。
音楽の使い方も演出も40年前とは思えないほどの新しさです。
白黒映像ですら演出に見える妙。
最後に信治さんの正体は何者だったんでせう(笑)
古典落語に材を採った「花見の仇討」「粗忽長屋」 佐々木味津三の[右門捕物帖]の奇抜な発端部分(しかし本家では腰砕けに終わった)だけを借りて独自の合理的な解決を施した「水幽霊」「首つり五人男」 まさにスタイリッシュさが身上だった都筑氏らしい傑作揃い。 中でも本書のハイライトは強烈なホワイダニットの興味で引っ張る「小梅富士」と「人食い屏風」。異常極まりない状況が論理的に解かれる様は華麗としか表現できない快感。 都筑氏らしいこだわりは、会話を江戸言葉で(巻末の著者自身の解説によれば、注釈が必要にならないよう、江戸に出来るだけ近い明治初期の話し言葉を使ったらしい)地の文を現代語で平明に描く点や、当時の風俗の徹底した時代考証にも表れている。 第一集に続いて迷わず買いの素晴らしい復刊。まったく本書のコストパフォーマンスは驚くほど安い。
本シリーズは、著者の年齢による衰えか、はたまたその情熱の衰えかは分からないが、次第に中身が薄くなる。
しかし、そのシリーズ第一作と第二作の合本である本書は、著者の意欲満点の時期のものであり、本格マイントあふれる傑作である。
著者が信奉する綺堂「半七捕物帖」にならって、江戸の四季や風俗を織り込みながら、しっかりとミステリになっている。
そして、のちにはセンセーとマメゾーばかりが活躍するようになってしまう長屋の連中が、それぞれの特技を生かして、みんなで活躍する。
つまり、グループ探偵ものにきちんとなっている。
これが、実に楽しい。
それぞれの特技を生かした活躍の場を与える、というのは、口で言うのは簡単だが、ミステリとしての完成度を保ちながらという制約のもとでは、なかなかに難しい。
リーダーとしてのセンセーの能力が、本書では十分に発揮されている。
そして、ミステリとしての完成度、意外性もともかくだが、本書には江戸が存分に描かれている。
巻頭の鎧の渡しから、祭、下町、花見等々、江戸の四季折々が、鮮やかに描写されている。
このあたりも、シリーズがすすむと薄くなるのだが、本書では、まさにヴィジュアルである。
怪異を信じていた時代を背景に、その怪異にロジックで立ち向かうという、まさに捕物帖のお手本だ。
語り口も、そしてその中に仕込まれた遊びも、シリーズ中では本書が最高である。
著者が海外ミステリについて述べたものは、どうしてこんなに面白いんだろう。 「死体を無事に消すまで」も、とても面白かった。 多分、著者が心底海外ミステリが好きだったからなんだろう。
著者の嗜好は、けっして本格ミステリではなかった。 どうも、スパイ・スリラーや怪奇小説や、そしてフレンチ・ミステリに著者のアンテナは向いていたようだ。 もちろん、本格は押さえておいてなのだが、それは最低限度に、という感じがしてならない。 ボンド作品、ソロ作品、その他のスパイ・スリラーなどについての熱い文章と比べると、どうしても本格ミステリについての文章は醒めているように見える。
それはもちろん、作品の紹介のし易さ、し難さ、というものが関与していたと思う。 しかしそれ以上に、やっぱり著者は好きだったんだよ。 本書を読んでも、その著者の嗜好、アンテナの方向は、よく分かる。 そして、こういうものを一冊にまとめて出版してくれたことに、著者のファンとして感謝したい。 著者が若く、ミステリに対する情熱に溢れていた当時のものが、こうやってまとめて読める。 しかも、海外作品についてのものである。
思えば、ポケミスは広いジャンルのミステリをカバーしていたんだなぁ。 今でも刊行は続いているが、本書収載の作品群を読破すれば、もうそれ以外のミステリを読まなくても、ほとんどのジャンルを制覇したといえるかもしれない。
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