白い巨塔 DVD-BOX 第二部
まずは前作との比較だが、キャスト・内容共に見劣りはなかった。しいて言うのなら、江口洋介は、少し里見の人物像を意識しすぎたあまり、演技に工夫や締まりがなかったように見受けられる。石坂浩二ならもっと東教授を繊細に演じれたはずだ。西田敏行は少しキャラが濃すぎた感じがした。逆に、上川隆也、及川光博、片岡孝太郎、沢村一樹、高畑淳子、水野真紀、西田尚美らはすばらしい演技だった。出番は多くはないが、それに驕らず要所要所をしっかりと再現された演技だった。しかし、すべてのキャストを見る限り、その人の変わりはいないと思う。主演の財前五郎を演じる唐沢寿明に対しつける注文はない。すばらしい演技だったと思う。このドラマは見ていて共感するところがたくさんある。彼ら(財前ら)の思いをしっかりと代弁しきっている。このドラマは視聴率を取りにいっていたドラマではない。このドラマの構成をみれば高視聴率だったのは当然の結果だと思う。このドラマに携わったキャストの方々、原作者の山崎豊子さん、脚本の井上由美子さん、などなどに本当に感謝したい。このドラマは私の記憶に永遠に残るものになることだと思う。過去に放送されたドラマ、そして今後放送されるであろうドラマなどを含めればものすごい数になるが、そのなかでも、最高傑作のドラマであろう。
白い巨塔 DVD-BOX 第一部
田宮二郎さん演じる白い巨塔を見て医学を志した頃を思い出し、リアルタイムで見ていました。第2部も含めて半年間長かったですが、次回がどうなるのか楽しみでした。主人公財前五郎を唐沢寿明君が演じている現代の医療現場をリアルに表現した作品だと思います。助教授が教授になるというのは、”札束がとぶ世界”だと友人の医師より聞いていました。庶民には考えられないことですが、国立大学医学部教授になれば、元以上のものが得られるのでしょう。しかし、研究業績が優れていなければなりたくてもなれないポストだとも聞きました。そして、激務であることも聞きました。一長一短があるのですね。第1部は、教授選をめぐる戦いを描いていて、唐沢君が必死にもがいて教授のイスを勝ち取る過程を逆に真剣に見入ってしまいました。人間の野心を、唐沢君流に表現されていて、田宮二郎さん演じた作品とはまったく違った新しい「白い巨塔」だと感じました。第2部に続きのレビューを書きます。
運命の人〈3〉 (文春文庫)
沖縄密約に関する政府の秘密保持対国民の「知る権利」を争うの裁判が展開されていく。熾烈な論戦が裁判所で交わされる一方で主人公は職業的に抹殺され、家族も崩壊の危機にさらされる。検察、弁護士、外務官僚、政治家たちがそれぞれの立場でそれぞれの組織原理や正義を貫いてゆくドラマチックな展開を堪能できる。
確かに面白い小説なのだが、これまで著者の作品で読んできた「不毛地帯」「白い巨塔」「華麗なる一族」「大地の子」「沈まぬ太陽」などに比べると、ズシリと腹にくいこんでくるような人間や社会存在の描写が少ないように思われる。裁判経過が多く、公判答弁や判決文などの文章が多いからだろうか。本事件は行政判例100選に掲載されているような有名な事件であり、その法律的解釈に関する説明よりも、著者の抜群の構想力が発揮される人間ドラマにより重点を置いてほしいと思った。