ハルシオン・ランチ 1 (アフタヌーンKC)
沙村広明の新作。
部下が金を持ち出したおかげで、河川敷で暮らすハメになった40男の化野元(あだしのげん)。そんな彼の目の前に現れた謎の少女ヒヨスさん。だがその彼女は何でも喰い尽くす能力を持っていた。さて、どうなるんだ?
良いです。
ストーリーとしては主人公の元がヒヨスに「この子なんなの?」と疑問に思いつつ、持ち逃げされた2000万を取り返すために動くって感じなんだけどもその間に起こる奇怪な出来事や変な登場人物との出会いとかでその作業は思うように行かず、そしてあえて笑いどころを外して描かれる作者のこだわりの見えるギャグが良いスパイスとなって、この作品がよりいっそうおかしなものに感じられるのです。セリフの一つ一つが重要なのかそうでないのか、ギャグであったりシリアスであったりと状況変化は激しく、キャラクターからにじみ出るかったるさなどはいつも通り。でもそこが好き。持ち逃げしやがった張本人のメガネ男子での沖進次とか常識人だけど無駄に苦労してるメタ子さんとかも仲間に加わってさらに物語は肥大化しそうだけど、やっぱ展開は全く読めない。たまにメタ子が暴走するが、なんか可愛い。あと沖くんはいろんなことを棚に上げる奴ですが、後半はいわゆる「無双」状態で男を見せたニクいやつ化しました(笑)。
かれらの頑張ってるけどバカやってる姿がほほえましい。
絶対おかしいけどおもしろいギャグまんがです。
無限の住人
まずは祝!再販です。購入当時、廃盤となってまして、かなりの高額でしたから。
盤としてはこれまでマイナーな存在でしたが、楽曲面では意外にキャッチーで覚えやすいフレーズも沢山あって楽しいです。何と言っても、曲名が極めて日本的なのが良い。ジャケットデザインも好きです。
本作と『踊る一寸法師』の2枚を(入門編とし)まず聴いて、ピンと来なければ、恐らくこのアーティストとは「水が合わない」と判断されて良いかと思います。
無限の住人(コミックス・イメー
「無限の住人」という時代劇マンガのイメージアルバムらしいですが、私はそのマンガのことは全く知りません。それでも全く問題なく、人間椅子の普通のアルバムとして聞ける作品。イメージアルバムであってサントラとかではないので全曲歌詞もあります。むしろ、題材が時代劇マンガという縛りのおかげで普段のアルバム以上に和で統一された世界観、歌もいつも以上に日本的で演歌・民謡テイストが強い。
「晒し首」は処刑され台の上に並べられた生首の目線から描かれた詩。怨念に満ちていた晒し首、鼻が溶け目玉が落下し、鼻の穴や目の穴に蜘蛛やコオロギが住み着いたり、自分の頭の上に登ったカマキリと月を眺めたりするうちに、いつの間にか平穏な心になり、土に返る頃にはある種の無我の境地に到ったかのような感覚。こんなすごい詩と曲を作れるのは人間椅子くらいだろう。「無限の住人」は前半の日本的な郷愁と開放感あるメロディーが素晴らしい。後半は三味線風ハードロックと浪曲・謡曲風のあまりに日本的な歌メロという強烈な組み合わせがカッコよすぎ!「地獄」はストレートでノリが良い。最後の演奏の盛り上がり方が非常にドラマチック、特にギターソロにしびれる!「蛮カラ一代記」は酔っ払ったオッサンが歌ってそうな雰囲気。「莫迦酔狂ひ」は酒の歌。中間部の展開がスリリング。「もっこの子守唄」は大正琴が響き、昔懐かしくて寂しげなメロディー。日本の歌って良いなあ…としみじみ思う。何となく必殺仕事人のエンディングってイメージ。「刀と鞘」は演歌くさい歌が良い。「辻斬り小唄無宿編」は人間椅子らしい津軽三味線ギターが大活躍。ユーモラスでやるせないメロディーが心に染みる。「宇宙遊泳」は壮大、遥か宇宙に思いをはせる。「黒猫」は中間部にテンポアップした展開をはさむタイプの大作。日本的で邪悪な詩世界。盛大で熱いギターソロで曲をしめくくるのもカッコイイ。名曲!