日本文化における時間と空間
日本文化の中では時間および空間は部分としてとらえられている。
日本文化における時間は「今」が強調され、
過去および未来に向かう意識は希薄である。
同様に、空間に関しては自分たちの住む場所=「ここ」という部分が重視され、
世界があって初めて「ここ」があるというとらえ方をしていない。
そして、「今」と「ここ」という現象は部分を積み重ねて全体へと至るという
同じ現象の両面である、と加藤氏はまとめています。
昨今、感情が前面に出て理性が後に回りがちです(例、イラク戦争)。
このような時に加藤氏のような理知的な本書が刊行されたのは
歓迎すべきことのように思われます。
何はともあれ、本書は難解なことばかり氾濫しているのではなく、
どちらかと言うと初めて加藤氏に触れるという人に向けて
書かれているように思われます。
読んで損はない一冊です。
日本の名歌をうたう
レコード芸術で評価が高かった日本歌曲のCDで、とにかく類を見ないほど収録曲が多い。
車で聞いてます。
1.「からたちの花 」
ここまで思いっきり豊かに歌い上げたのは、類を見ない新スタンダード。
5.「悲しくなったときは」
天井桟敷の師の詩になつかしい孤独なすがすがしさを覚える。
8.「六つの浪漫」(~風をみたひと)自然と一体になったナウシカの絵が出てきた。
13. 「落葉松」
野崎由美の情感豊かな歌は永久保存版。傑作
14. 「鳩笛の唄 」同じく傑作
16. 「暖炉の部屋で」
暖かい気分にさせる私のお気に入り。鼻歌でよく出る。なぜかマッチ売りの幸せを祈る。
日本 その心とかたち 加藤周一 [DVD]
平凡社から刊行された10冊本は読んでいたのですが、映像は見ていなかったので、発売されたことを知った時は、とても嬉しかったです。
日本の文化は素晴しいという日本人は数多くいますが、いざその美点を挙げるときに、日本の文化の魅力を具体的に語ることができる人は、それほどいません。しかも、そのうちのほとんどは自分の専門については詳しくても、全体の有りようを語れるわけではありません。ですから、この番組の成立は、加藤周一氏を抜きにして考えることはできないと思います。
なお、NHK教育で放送された優れた番組はまだまだ数多くあるので、そういった物もできるだけソフト化してもらいたいものです。
ほかの方も書いておられますが、価格が高いのが欠点です。
自分で購入するのが難しい方は、DVDを揃えている地元周辺の公立図書館へ、買ってくれるまでリクエストをしましょう。
養老孟司の大言論〈1〉希望とは自分が変わること (養老孟司の大言論 1)
養老先生が雑誌「考える人」に連載されていたものをまとめたものです。相変わらず養老先生のモノの見方は面白く、しかも意識していなかった部分にまで踏み込んできます。いわゆるエッセイにあたる文章ではありますが、何処か論文のようなものも感じました。面白くもあり、しかしかなり極端な面もありますけれど、それでも面白いと思わせるものがあります。
紀行文のように出かけることが多い養老先生の、出かけた先で起こる様々な事柄、そこから考えを巡らせます。ただ、ほとんど全てに関して、およそ養老先生の考え方は既に決定されていることが多く、だからこそ、完成されたひとつの考え方として面白く為になり、私の考え方の死角を照らすかのような感覚になりました。
「万物は流転する」という言葉の意味と情報の不変性、すべてが利益団体化する日本と英国の違い、「手入れ」という思想(丸山 真男の「日本に伝統的思想は無い」を受けての発言ですが、なるほどです。身体性を持った方法論を思想というのは意識したこと無かったです)、田舎と都会生活の対比から考える実体験を伴った経験の重要性、近代化し合理化してきたことの意味する脳化する都市(しかし、ここには異論を感じました、身体が先に生じ意識はそれに次存在であろうとも、意識のない所に人間性もまた存在しないんではにか?)、真理は単純で事実は複雑(生物の多様性の話しであり、物事を単純化することを突き詰め過ぎ、細部をおろそかにすることの原理主義化の弊害を指摘しています)、日本人なら参勤交代しろ!(というのはやや強引でたかだか250年くらいの江戸時代のそれも大名だけの習慣というか制度ではありますし、言葉の意味の正確さを尊重する養老先生っぽくないのですが、要は脳だけでなく身体を使えということなのであろうと思います)、純粋行為主義者(行為とは合目的的なものであるという考え方)である養老先生の挨拶や手段的行為への批判など、本当に普段は考えない方向からの指摘が刺激になります。
が、中には頷けない部分ももちろんあって、題名にもなっていますが、自分が変わることが希望になるのはかなり(個人的に、ですが)難しいことなので希望にならないかも、と感じました。変われる人なら良いですが、変えたくても変えられない人には希望は無い事になってしまいますし。
また、この方のエッセイですと割合出てくるのがこのNHKの話しでして、確かにNHKはつまらないですし、公平、中立というのは言葉どおりに捉えればありえないわけでして、当然の批評ではありますが、NHKの肩を持つわけではなく、おそらく公平、中立を目指す、ということであろうと思われます。ファンタジーはすぐ離れられて面白がれるからこそ危険にもなりうるわけですし。虫やファンタジーなど自分の好きなモノに対する評価は高く、それ以外には割合どうでも良いという批評にも感じられますが、それでも鋭い指摘が多くあり楽しかったです。
養老先生の著作が好きな方に(言い切られると信じやすくなるのはどうしてでしょうか?)、虫が好きな方に、オススメ致します。
読書術 (岩波現代文庫)
加藤周一氏による読書の解説本です。
具体的には
1どこで読むか
2どう読むか(精読術、速読術、本を読まない読書術、海外書の読み方、新聞雑誌の読み方、難読書の読み方)
という構成になっています。
私は以前、斎藤孝氏の「読書力」を読んだのですが、読書力の方は読書の重要性と具体的な方法が約半々という印象を持ちましたが、本書はべったり方法論という感じです。
本を読むのは苦でないけどなんだかうまく知識が積みあがっていかない、無駄な時間が多い気がすると感じる方にはぜひ。読書の効率化が図れると思います。