ディケンズと並び称される、ヴィクトリア朝時代の作家ウィリアム・メークピース・
サッカレイの『バリー・リンドン』を、キューブリックが美しい「動く」絵画のように
仕上げた作品。
とにかく1カット、1カットが息を呑むほど美しい。「伝説の」ロウソク撮影だけでなく、
緑豊かな田園風景、抜けるような青い空、流れ行く暗雲、枯れ葉舞う森、赤い制服の
イギリス兵の隊列…等、1カットごとの構図、色彩の凝りようが尋常でない。キューブ
リックは、18世紀の絵画を参考にし、当時の風物をそのまま再現しようとしたという
が、その目論みは見事に結実したといえるだろう。
その映像至上主義に比べると、ドラマそのものが素っ気無いのが、いかにも天邪鬼
キューブリックと言ったところ。彼は一貫して、ドラマチックなピカレスク・ロマンに仕
上げることをせず、バリーという野心家の栄枯盛衰を傍観者の目で冷然と眺める。
キャメラは常に対象物から離れ、ロングで捉えることからもそれはわかる。静かで、
ストイックなスタイルだ。対して、2度あるラブシーンはストイックながら(いや、スト
イックだからというべきか)、美しく官能的だ。キューブリックのフィルモ・グラ
フィーの中でのラブ・シーンのベストではないだろうか。
DVDの画質は、本編の長尺もあって、若干デジタル圧縮の弊害もあるが、総じて、
デジタル・リマスターされた画質は良好。ただ、そろそろBlu-rayのHD画質で、この
極上の映像絵巻を楽しみたいというのが正直なところだ。
18世紀ヨーロッパの物語ということですが、注目は、あたかも 古今の名画を再現したかのような、美しい画面の連続。 「2001年」で特撮技術を多数開発したキューブリックですが、 この映画に見られる風景には勿論(^^)特撮なんか使われてい ません。 キューブリックは、太陽や雲まで演出できるのか? と言いたくなるほど、どのショットも完璧に絵になっています。 といっても、別に絵葉書的な「面白くない」絵じゃない。 逆に「異様」とでも形容したいほどで、ただ驚くのみ。 主人公の不運を突き放して見ているようなキューブリック独特 の「神の視線」も健在そのもの。 人間ってどうしようもない生物だなー、としみじみと感じてしまう。 「2001年」で猿が空中に投げた骨が、唐突に宇宙船に切り替わる 有名なシーンがありますが、骨と宇宙船の間でばっさりカットさ れてしまったのは何なのか? その答えがこれです。
映像良し、音楽良し、衣装良し、こだわりもここまでくると大変良し。
静止画像だと思ったファーストシーンが、突然動き出したときにはびっくりしました。幸いにも25年ほど前、映画館で見たのですが、最初のシーンは「絵画」だと思いました。あんな雲は実際にはない、絵で描いたに決まっている、と思いました。ここまでフレームの中に自然美を収めることのできるのか、という映画の可能性に驚きましたね。これが最初の5分。その後次から次へと、ロココ絵画の美術館を歩くが如くの絢爛豪華な映像。こだわりの光の使い方、衣装、そして音楽。ヘンデルのメインテーマ「サラバンド」の重厚な弦の響きも良かったですが、「アイルランドの女」の何とも言えぬ郷愁を誘うような、しかも色気があって魅惑的なメロディーに映像共々酔いしれました。キューブリックの他の作品ほどストーリーに驚きはありませんが、私的にはキューブリックの映画作家としての心意気が一番出ている「最高傑作」だと思います。必見!
バリーリンドン入っていたので買おうと思いましたが、
※現在、『バリーリンドン』 と『ロリータ』 の単品ブルーレイ商品の発売予定はありません。
との、一文を見つけたのでボタンを押すのを躊躇しました。
うそばっかり、きっと発売されるよ。嫌な書き方だなあ。
別にね、1万円が惜しい訳ではありませんが本来欲しいのはバリーリンドンだけ。
付加価値と悪意の区別も付かないなんて、担当者が悪すぎる。メーカーさん、こんなひどい仕打ちをファンに行って大丈夫ですか??心待ちにしていたタイトルだけに残念でなりません。
もうガッカリ・・
追伸
北米版のバリーリンドン単品(1700円前後)に日本語字幕が付くという噂を聞いたので取り寄せ中です。鑑賞後改めてレビューします。
8/30に到着して北米版バリーリンドン(単品販売)視聴しました。キレイな映像で日本語字幕が出ました。日本語で自動再生されましたので、今後日本版が発売されても同一のディスクが使われるものと思われます。
詳細はリンクしておきますのでご確認下さい! バリーリンドンファンの方にはとってもお勧めです!(二週間ほど掛かりましたが、送料入れて2000円くらいでした)Barry Lyndon (Blu-Ray)
キューブリックの映画は、遺作以外は全て見ましたが、この「バリー・リンドン」と、 「2001年宇宙への旅」が気に入っています★ また、サントラ盤では「時計じかけのオレンジ」も含めて、三枚共に、レコード・アルバムを 持っていました。 どの映画も、とても映像がクリアで、「バリー・リンドン」も当時、 ローソクの灯りだけでの撮影が話題になりました。今では当たり前ですが・・・。 そして、この三作に共通するのが、クラッシック音楽を映画の重要なアイテムとして 使用していて、とても効果をあげています。私のように、それまでクラッシック音楽に ほとんど興味がなかった者にも、サントラ盤ですが、購入させた?のですから「笑」 「バリー・リンドン」に限っては、時代設定もありますが・・・ このアルバムは、バロック音楽と、トラディショナル音楽を使用していて、 メイン・タイトルとしての「サラバンド」という曲は、もともとは、11曲目のように、 シンプルで落ち着いた感じのバロック音楽で、それを1曲目や、ラストの曲では オーケストラでの迫力ある音楽に仕上げています☆ 17曲目の、バッハの「アダージョ」は、これぞバロックという感じで、心地よく、 6曲目、8曲目のトラディショナル音楽は、笛とドラムだけでの演奏ですが、 とても新鮮に聴けて、またメロディやリズムもいいです♪ とにかく、サントラ盤としても、クラッシック盤としても、聴き応え満載です★ 今の時点では、値も高く・・・また再販してほしいですね。国内盤も是非!
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