宇野浩二は「小説の鬼」とまでいわれた作家であるが、
その饒舌体といわれる独特の文体はやさしく語りかける
ようである。
宇野は実際のモデルのある小説というか、他人の逸話を
小説に仕立てる技術において天才である。
ここにある「思ひ川」には直木三十五、芥川龍之介、宇野
本人が描かれている。直木をモデルにしたと思われる仲木
が借金取りを撃退する場面は実は宇野の友人である広津和
郎が実際に直木三十五の家で見た様子である。
「枯木のある風景」は鍋井克之と小出楢重という二人の洋
画家がモデルであり、「蔵の中」は近松秋江がモデルであ
る。
しかしながらモデルのあるなしは宇野の小説にとっての本
質ではなく、やはりその表現力の豊かさと人の心に機微が
どう描かれているかである。
殊玖加奈子さんのホームページに掲載されている、若いころからのフルートとの奮戦記やハンガリーでの人との出会いなどの話を読んでから聴くと、演奏者の人生や現在の心境がしみじみと心に沁みてきました。心が癒される1枚です。
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