人からすごくいいよ、と奨められてみてみた。今流行り(といっても2年前の作品だが) 女性向の純愛ストーリーの邦画かと思っていたがぜんぜん違った。 男にもいやというほど伝わってくるこのせつなさはなんであろうか。 ジョゼと恒夫が結ばれるシーン。池脇千鶴が白いブラジャーをはずし胸を見せる。 池脇千鶴はグラビア、モデル出身でもないので胸は決して豊満ではなく美乳ともいいがたいの だがそこが妙に愛しいのである。恒夫(妻夫木聡)がそこで「泣きそうだ」と つぶやいてしまうのも本当に好きな娘の裸を初めて前にした男ならつい共感してしまうだろう。 (欲情とは別にある「あの」感情を知っている男に限ればの話だが。) そしてラストに向かっていく恒夫の弱さや狡さも共感してしまう自分にやるせなさを感じた。 あるインタビューで監督が「この映画(で感動すること)はダメ男かどうかの踏絵です」と 言っていたそうだ。その通りかもしれない。忘れられない本気の恋をしたことある人ない人で 感想が違ってくるかもしれないけれどぜひ一度は見てもらいたい。
再放送でハマったが、本放送時、タイトルと先入観で敬遠して見ていなかったことを心の底から悔やんだ。既成のドラマのお約束を気持ちいいまでにブチ壊していきながら、全く新しいものを打ち立てることに成功している。自分史上、間違いなくNo.1のテレビドラマ。これに比べると、もうどんなドラマも見劣りしてしまいます…。 クドカンの脚本、堤氏の演出、そして素晴らしいキャスト(全員ハマリ役という恐ろしさ!)と、全てが奇跡的なまでに完璧で、どんな文章をもってしてもこの魅力を伝えることなどできない気がする。 食わず嫌いは本当によくないです。
普段はドラマのサントラなんて買わない僕ですが、思わず買ってしまった1枚です。1曲目のシンクロ BOM-BA-YEの手拍子を聞いた瞬間、全身に鳥肌がたってしまいました。他にもドラマを見ていた人なら、「うん、うん、」とうなずける曲が満載です。
誠、愛、そして岩清水、その他の誠を取り巻く人たちの想いが描かれていて、シリアスな純愛ラブストーリーを緩和させるために、三池崇史監督はミュージカルという手法をとったのだと思いました。余貴美子と妻夫木の鉄道でのシーンはとてもせつなかったです。また「眼鏡は顔の1部なんだぞ」という岩清水のセリフは、昔そういうCMがあって昭和テイストの小ネタとして笑わせてもらいました。それにしても歌が全部良いですね。
50代以上は大丈夫でしょうが、内容は万人向きではありません。この時代の出来事や新左翼運動などに特段興味がない、主演二人の共演だけを楽しみにくるような若い人達が気楽に楽しめる映画では全くありません。現代の若者たちにどのくらい理解できるのか?
ただ、今の時代でも、自分の理想の職場に就いている人は希有でしょうし、青臭い理想に燃えて、現実を知らないまま先輩の声を受け入れることもせず猪突猛進してしまう人だっているはず。人は皆、失敗を繰り返し成長します。間違いも起こします。自信過剰になったり名声を欲しがったり。それは今も昔も変わらない事。そんな人間象を描いた本作は、ある意味、若者にこそ観てもらいたいです。
冒頭から、ピンキーとキラーズの「恋の季節」が流れ、一気にあの頃にタイムスリップした気分になりました。平山三紀の「真夏の出来事」も使われます。主人公沢田がオールナイト上映で観るのが、川島雄三の「須崎パラダイス、赤信号」、音声だけでスクリーンは映りませんが「不良番長シリーズ」だったりします。また、仲良くなったアイドルと観るのがジャック・ニコルソン主演の「ファイブ・イージーピーセス」だったり、ダスティンホフマンとジョン・ボイト主演の「真夜中のカウボーイ」が、本作のキーワードともなっています。美術も、新聞社の事務所の様子とか、当時の雰囲気が良く出ていたと思います。
2時間21分という決して短くない作品で、展開もハラハラドキドキという訳ではないのに上映時間中ずっと惹きこまれてしまいました。
全共闘運動に乗り遅れた2人。それぞれ、「ジャーナリスト」と「新左翼運動家」と立場が異なりながらも、奇妙な友情(?)というかシンパシーを感じる。このふたりの奇妙な交流。それがこの物語のすべてといってもいい。「どこがどう」って話ではない、不思議な感覚がありました。それはこの時代の強い力なのかなとも思います。
本作は、社会派映画であり、青春映画でもありますが、原作者川本三郎が云うように主人公が挫折する『敗北』の映画です。たまにはこういう映画もいいです。
山本浩司、山本剛史、山内圭哉、長塚圭史、あがた森魚など登場シーンは少ないけれど、印象的な役者が大勢登場していたのもツボでした。また、新聞社の社会部部長を演じる三浦友和が、「新聞はそんなに偉いのか」と食って掛かる沢田に対して「そうだよ、偉いんだよ!!」と凄むシーンは、本作のハイライトの一つ。このやりとりで、観客は主人公と革命家の政治ごっこの稚拙さ、その暴走度合いをいやおうなく自覚させられる。ここ数年来、一皮も二皮も剥けた演技を魅せる三浦友和の役者としての貫禄さえ感じました。
綱渡りのような青春時代に終止符を打ったのが「なんで俺あいつのこと信じちゃったのかなあ。」と言う沢田の言葉...。ラストの長回しシーンが、この映画のすべてでしたね。
エンドロールで、原作のタイトルの元となったボブ・ディランの「マイ・バック・ページ」のカヴァーを真心ブラザースと奥田民夫が歌っています。歌詞の内容と映画がぴったりなので歌詞を記しておきます。
白か黒しか この世にはないと思っていたよ
自尊心のため 無駄な議論を繰り返してきたよ
英雄気取りで多数派の弱さを肯定もしてきたし
僕を素晴しいと言ってくれた男達も次の獲物に飛びついた
あの頃の僕より今の方がずっと若いさ
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