今年の芥川賞受賞作と聞いて読みました。主人公の永遠子と貴子の現在と過去、または、現実と記憶の物語です。2日間くらいの内容と思いますが、心理面の記述を主体に豊富かつ的確なタッチで描いています。女性らしい繊細な感じを与えるとともに天賦の才能が感じられます。私は過去の記憶と現在の出来事が互いに干渉しあいながら時間がゆっくりと流れているのだということを考えながら読み進めましたが、それ以上の物語ではありませんでした。私の読み方が浅いのかもしれませんが、この物語の中で筆者が何を言いたいのかということについては最後までわかりませんでした。また、読み終えることに多少忍耐を要したことも付け加えます。
単行本が出るまで安心出来ないので雑誌を購入。
異様な文体模写がずっと続くのかと思いきや……ギャ〜! 面白すぎる! 「君は本当の○○を知らない!」というキャッチフレーズはこの作品のためにある。 文豪のクローンが作品を書くことによって、未知のエネルギー「青脂」を生成させるのが前回のあらすじ。 冒頭は前回同様、中国語と造語が連発するサイバーパンク風味なんだけど、それからあれよあれよと予想外の展開。 延々と続く秘密基地、水上人文字、下水オペラ、巨根教団、並行世界……何を言っているのかわからないと思うけど、それだけで話が一つできるようなガジェットが次々と出てきては、すぐに舞台も物語も移ってしまう。この惜しげもない使い捨て感に意味があるように思えてならない。 特に水上人文字は最高!
とにかく、続きが楽しみ。 この2回目だけでもオススメ。
日経の将棋欄に、全くつまらない観戦記が載せられていた。あまりのつまらなさに筆者は誰か見ると、朝吹真理子とある。知らない名だったので検索をかけ、図書館からこの本を借り出した。 最初は読めたものではない。話の筋がわからず、何を書いているのかさっぱりわからない。しかし、ページをめくっていくうちに、突然すっと読めるようになったのには驚いた。再び、何がどうなっているのかさっぱりわからない。狐につままれたように感じ、一旦本を閉じてどういうからくりになっているのか、見定めるために最初から読み返す。
読み終わった今、感想としては、(ふざけた奴だな。)としか思えない。この人の長所は文体にある。一種独特で、普通の散文を読むのではなく、「今様」や「短歌」を読むようにリズムをとりながら読むと、すっと頭の中に文章が入ってくる。 しかし、これほどの仕掛けがありながら、語るべき「物語」が聞こえてこない。この人は物語を紡ぎだす能力は持ち合わせていないのだろう。
物語を紡ぎだす力は持たない、しかし文章は書きたい、ではどうすれば良いのだろう。大抵の人はこの類の文章を読んだことがないだろうが、実は元があるのである。この文章を見ていて、シュルレアリスムの詩や小説、例えばアンドレ・ブルトンのシュルレアリスム宣言・溶ける魚 (岩波文庫)を思い出す人も(特にフランス文学に親しい人は)、おられるだろうと思う。もうすでに使う人もあるまいと思われた自動記述の技法を用い、自分がこれまで貯めこんできた古典から近代日本文学のありとあらゆるテキストの素養を触媒に使って生み出されたのが、この「語るべき物語のない小説」の正体である。
故に、私個人の願いとしては、この人の詩を読んでみたい。この人の才能から考えて、もっともふさわしいのは詩だと思う。
今回ほど 待ちに待ったことはありませんでした。いつも一流の画家の素晴らしい表紙を開ける時の期待に満ちた、文芸誌の誇らしさとでも云うのでしょうか…ぎっしり埋めつくされた宝箱のような気がしてなりません。 菊池寛は この二人の作家を世に送り出すために、あったのだとも…偉大な文化事業だったのだとも…思いを馳せました。文藝春秋社に感謝しています。
ユリイカの猫特集。
猫好きの人々が多方面から興味深い考察をしています。
猫飼いなら思わず「あるあるあるある(笑)」と言ってしまいそうなエピソード満載です。
お気に入りは、いがらしみきお氏のシュールな4コマ漫画と写真家アラーキーの愛猫チロのくだり、
精神科医斉藤環氏の、いきなり「猫を飼うのはおすすめしない」から始まる一文にも大変納得、共感(?)させられました。
ほかにも、著名な作家たちが著作の中で猫に触れた部分を抜粋など盛りだくさんです。
古今東西の猫スキーさんたちのおかげで、猫好きの自虐的な愛情表現を思う存分堪能できました。
ありがとうユリイカさん。
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