太宰府は日本の首都だった―理化学と「証言」が明かす古代史 (シリーズ・古代史の探求)
少し古い本ですが、重要な点を論じていますので是非ご一読下さい。
著者は年代測定の問題を論じた第1章を初めとして、第2章太宰府のなぞ、第3章盗用の史書、第4章倭の五王、第5章水城と山城、第6章法隆寺に化けた観世音寺、第7章天子と大王の墳墓と、太宰府にまつわる様々な問題点を論じています。一見すると古田武彦さんの九州王朝説に連なるように見えますが、著者は慎重に筆を進めています。特に年代測定の問題には、関連する学者は正面から対応すべきではないでしょうか。改めて言うまでも無いことですが、日本書紀に少しでも疑問を持たれる方なら、古代日本列島には幾つかの国が存在した、当然その中に首都があった、と考えるのは当然ですね。太宰府に関して言えば、発掘責任者本人が、最初の遺構(全部で3層あるうち)について日本書紀が沈黙しているのはおかしい、と述べています。著者は他にも幾つか証拠を提示していますが、対外(中国と朝鮮)的に見ても状況証拠から見ても、太宰府あるいはその近辺に古代の首都があっても何の不思議も無いと思います。
詳しくは本書を読んでいただくとして、内容に対して星3つ、出版の意義に星1つで計星4つと評価しました。
刀伊入寇 - 藤原隆家の闘い
歴史小説だと考えるには、
ちょっと登場人物がオールキャスト過ぎて、やりすぎ感がある。
でも、平安時代が舞台の時代小説なのだと考えれば、
ドラマチックで面白い。
この小説の要は、
都で道長が「望月の歌」なんぞを口ずさんでいるとき、
大宰府では外国の侵略を受けていた、
という一事。
なので、前半は題名とは裏腹に、
都の貴族たちの描写がダラダラと続く。
変人にして漁色家の花山院が引き起こす騒動に
巻き込まれていく藤原北家の人々が描かれている。
男たちの意地の張り合いや仕返しの応酬が延々と続いて、
「とい」という謎のことばと、謎めいた女が登場して
やっと伏線が現れた〜!という感じ。
さらには清少納言&紫式部や晴明なんかも登場。
たびたび起きる流血事件の描写を読んでいくと、
時代的には「枕草子」「源氏物語」の成立時期なのだが、
やってることは「平家物語」である。
後半に急展開で「刀伊入寇」が描かれる。
こうして物語として読むと、その被害の甚大さにあらためて驚く。
平安時代はホントに表の顔と裏の顔の落差が激しいなぁ〜。
もう少し最初から主人公を中心に描写して欲しかったのと、
小物的悪人の道長の造型にちょっと物足りなさを感じた。
また、源氏物語の創作エピソードは、蛇足だと思う。
読者によっては違和感が強すぎて引くような。