群衆 - 機械のなかの難民 (中公文庫)
明治以降の国家主義社会の中で、機械として扱われる大衆像を漱石、啄木や大杉栄の作品、言動を通して描く画期的な論考。特に夢野久作の『ドグラマグラ』の評価は斬新。その正統的な嫡子として中井英夫の『虚無への供物』を位置付けるくだりも非常に示唆的。さすが都市論の傑作『乱歩と東京』の著者だ。
オフコース・グレイテストヒッツ 1969-1989
このアルバムについての批評の声がずいぶん上がっておりますが、
コレはコレでいいアルバムだと思います。
『オフコースの歴史』というものを年別に上手にまとめてらっしゃいますからネ。
鈴木さんの曲は、また別のアルバムにきちんと収録されておりますから、
そちらをご購入なさってください。
「みんなの意見」は案外正しい
本書は、単に「たくさんの人が意見を寄せれば正しい答えに近づく」と書いた本ではない。
多様性、独立性、分散性が満たされて初めて正解に近づくと主張している。
実際には、これらを満たす集団はそれほど多くないように思う。
オンラインコミュニティでの議論が、極端な方向に走りがちなのはなぜか、など、むしろ「みんなの意見が正しくない」ことについての考察の方が面白いと思った。
回帰線
何といっても尾崎の代表曲中の代表曲、シェリーと卒業が収録されているアルバムだ。特にシェリーは尾崎の人生そのものを凝縮して表現されていると評される、知らない人にはぜひ聴いてほしい曲だ。
“あの頃は夢だった/夢の為に生きてきた俺だけど//お前の言うとおり/金か夢か解らない暮らしさ”“転がり続ける俺の生き様を/時には不様な格好で支えてる”“何時になれば俺は這い上がれるだろう/何処に行けば俺は辿り着けるだろう/俺は歌う 愛すべき者すべてに”
挫折した人間の思いを表現していると読める歌詞は、これを聴く同じ経験をした全ての人に、強い共感と励ましを与えるだろう。
ライブCDラストティーンエイジアピアランスのシェリーもいい。
そして、ただ、流されるままに学校を過ごして、流されるままに卒業する、それでいいのか、と、社会に、自分自身に問い掛ける卒業も素晴らしい。
その他にもスクランブリングロックンロール、ダンスホール、存在、バラードの、群衆のなかの猫、TEENAGE.BLUEもお薦め。尾崎ファンなら必聴。
「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)
日本語タイトルから受ける内容の印象と違って、
本書は、優れて社会経済、哲学的な論考のエッセイで、
知的好奇心を相当満足させてくれます。
いわゆる「烏合の衆」が各人が個別勝手に判断している
ような状況は、経済、社会、生活の中に相当多く見られる、よく
ある場面ですが、そのさまざまな場面について、社会学、心理学、
経済学、政治学、行動力学、交通社会学、生物学、その他
博識を駆使して、しかも、平易な文章で、読者をぐいぐい引っ張ります。
果ては、インターネット、グーグル、リナックスなどの話題も
入れながら、「烏合の衆」の知恵について、ここまで高邁な考察と
深い示唆に富んだ分野に仕立て上げた著者の力量に脱帽です。
ただし、著者は、「烏合の衆」の判断が常に正しいと主張している
わけではなく、結果としてそうなる場合に対する摂理への驚異と
科学的分析と畏怖の念を丁寧に考察している、という本です。
さらに、日本語訳もかなりこなれていて、大変読みやすいです。