奇跡の脳: 脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)
最近Eテレで「スーパープレゼンテーション」という番組が始まったが、著者のTEDでのプレゼンも取り上げられていたので、話題の方なのだろう。
実は評者の父も脳梗塞を発症して8年になるが、いまだその回復ははかばかしく無い。著者は脳梗塞後発症後8年でほぼ完治したと聞き、何故父と著者とでかくも違いが出たのか知りたくて手にとった。
だが、途中からそんなことはどうでも良くなった。
詳しくは本書を読んでいただきたいのだが、著者は脳梗塞で左脳に損傷を受けたことにより、右脳だけが人間を支配した場合に涅槃の境地に陥ることを発見し、左脳回復後もその感覚を呼び戻すことがいつでも可能になったという。しかも、それは誰しもが到達可能だとしているところが、本書の主張の真新しいところなのだろう。
なぜ、宗教に人が帰依するのか、あるいは何故デマや恐怖に人がすぐ取り憑かれてしまうのか?様々なことに、本書の内容は応用が効くように思われる。
経済学者の池田信夫氏は、かねがね「21世紀の経済学の教科書は、脳科学のページから始まるだろう。」と発言しているが、本書を読了してその思いを新たにした。
巻末に翻訳をされた竹内薫氏と養老孟司氏、茂木健一郎氏が解説を寄稿されており、なんとも贅沢な仕上がりになっている。