シリーズ三作目です。 全二十八話から成っており,あえて虚構話も除外しない作りになっているのは従来通りです。また,〈高楼館〉のように,第一作目から続いている,いわば連作も含まれています。 そして,全シリーズに共通する〈まえがき〉は,あたかも「異界へ通じる扉」の役割を担っているかのようです。
個人的に印象に残ったお薦めは―
○〈油絵〉…「絵」をモチーフにした怪談はよくありますが,本作は,最後の最後で危機を切り抜けるスリルがたまりません。 ○〈仮面の履歴〉…一読したあとは,それほど印象に残らなかったですが,〈あとがき〉で触れられている「後日談」を読んで,じわりとした怖さを感じました。「遺書」の内容も気になるところです。 ○〈読んだんだけどさぁ〉…ある意味では,今回の白眉かもしれません。読者をして,靄がかかったような混迷,そして早く続きを知りたい苛立ち,を感じさせます。著者も〈あとがき〉で,「少々厄介な話が転がり込んできた」とおっしゃっているほどです。 ○〈座敷童三題〉…一般にイメージされている座敷童とは異なる,怖い一面を垣間見せてくれます。 ○〈ニキビ〉…これを読んだ後,僕は,昔読んだ水木しげる氏のマンガを思い出しました。それは,少年の体内から木の芽が生えてくるという話です。 ○〈落ちてきたモノ〉…本作の最終話です。彼女が体験した理不尽さ,また結末の唐突さと相俟って,続きを知りたい衝動に駆られます。
今回は,宇宙人や妖怪を想像させる話はほとんどなく,霊にまつわる話が中心です。その意味で,既刊よりも一層「怪談」らしさを感じます。 また,「続き」を期待させる話もあり,続刊が楽しみです。〈まえがき〉の口上によれば,結構な数の話が著者のもとに集まっているはずなのですが…。
著者の体調も懸念されるところなので,読者としては,ゆるりと新作を待つことにしましょうか。
読んでいくにつれてどんどん引き込まれていきました。 〈高楼館〉という建物に関連した話が多く収録されています。この本のメインといえる話です。 紅岩魚という話は「ただの偶然では?」と思ってしまいましたが、なんだか惹かれる話でした。 あとは『病院繋がり』、そして特に『紅い傘の男』が面白いです。
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コロコロ視点が変わるので、主人公たちに感情移入がしにくいです。
肝心の義経が、いまひとつつかみにくいキャラクターなのが、その主な原因だと思います。
2巻3巻と読んでいくと、また感想が変わるのかもしれませんが、タイトルが行く先を指し示してしまっているような気もして、2巻の購入を躊躇しているのが正直なところです。
実話系怪談集です。
本書の特色は,第一に,著者自身の体験談が多いことです。また他人の話の場合は,著者が直接確認できたもの限定していることです。
従って,都市伝説のたぐいは採用されていないといえますが,その分,体験者の感覚がダイレクトに伝わってきます。
第二に,文体に関して,極力主観を廃して単に事実を述べるというスタイルではありません。つまり,著者のスタイルが色濃く反映している文体で,創作怪談を読んでいるに近い印象を受けます。この点が,読者の好悪の分かれるところでしょう。
また,著者の趣味である釣りにまつわる話も多いのですが,前置きが長いと感じる読者もいるかもしれません。
以上のような点から,評価は分かれるでしょうが,説明のつかない不思議さが満載されているのは「実話」怪談ならではの醍醐味でしょう。
シリーズを重ねていることからも,読者の人気が高いことがうかがえます。
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物語の大転換を迎えるこの第三巻。いよいよ義経と彼をかくまう奥州討伐に乗り出す頼朝。そんな中で、正気を取り戻した義経は、自分がしたことの重大さに気づき、腹を切る。義経を失った、彼の影武者である沙棗は、義経として生きることを決意し、奥州藤原氏の面々は、奥州の民を守るため、滅んでいくことを選択するのだった...
物語は、義経の悲劇から、さらには奥州の存亡の危機へと展開する。奥州制覇の欲望にまみれながらも、義経の影に怯える頼朝とこの世の浄土ともいうべき奥州を、そしてそこに住む民の平穏な生活を守るために、知略を尽くして、いさぎよく滅びようとする奥州藤原氏の対比が見事。彼らの生き様、死に様がいきいきと描写されている。
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