キューバ革命の英雄の一人「チェ」となる以前の若き日のエルネスト・ゲバラ、そしてその友人アルベルトの二人がオンボロバイク「怪力号」に跨り、広大な南米大陸を縦断するロードムービーです。 アンデスの高原、古代先住民の遺跡、アマゾン川、そして南米の数々の都市を巡る過程で、向う見ずな二人の男達、とりわけエルネストはこれから自らが進むべき道の指針となる何かに気づきます。実はこの旅において、エルネストは将来の敵となる「アメリカ合衆国」を意識し始めることにもなるのですが、本作品では「合衆国」という存在に敢えて触れないことにより、青年の成長に焦点を絞った、よりまとまりのある映画に仕上がっています。 旅すること、それ自体が人生を変えてくれるのではありません。旅で出会う景色や人々、そして過酷な現実に対峙した時の自らの気概や好奇心、そして情熱こそが、人生を変えるのだということをこの映画は伝えてくれます。腰の重い方であっても、彼らの旅を体験すれば、1万キロの大旅行とはいかずとも、日常から脱するちょっとした小旅行への誘惑にかられるのではないでしょうか。また、私自身そうでしたが、旅行好きな方にとっても、作られた「旅行」とは異なる本物の「旅」への憧憬と意欲をかきたてられることは間違いないでしょう。 ゲバラ役を努める主演ガエル・ガルシア・ベルナルの演技が秀逸。照れを隠す際のバツの悪い苦笑い、時折見せる鋭く陰影のある表情で、まだ頼りないが、徐々に何者かへ脱皮し始める青年を見事に演じきっています。加えて、アルベルト役のロドリゴ・デ・ラ・セルナが、ラテン男そのままを体現する陽気なノリで、波乱万丈の旅に彩りを添えています。 本作品に共感した方には、戸井十月著の「チェ・ゲバラの遥かな旅」をお奨めします。映画とはまた違った視点から若きゲバラの旅とその後が描かれ、この英雄の真実の姿をまたひとつ知ることができます。
テレビドラマの繋ぎ、という低予算面を考慮すれば、かなりよくできている映画です。
ただ、事実に基づいた面が多い映画でありながら、公平に見える部分が後半からボケてしまっているので、下手をすると、アメリカのプロパガンダ映画にすら見えてしまうでしょう。
今、豊かなキューバがあり、昔、民主主義を踏みにじり、アメリカと結託したバディスタを、倒した勇敢で聡明なカストロといえども、途中で非情な判断や、政治のミスをしたことは事実です。
それにより、一時であっても民衆が苦しんだり、ゲバラが革命戦争で死んだことをカストロが後悔しており、資本主義と共産主義が争うことそのものが人間としてお互いに不幸だった、という面を、恐らく制作者の意図として描きたかったのでしょう。
ですが、この作品は相当シナリオに造詣の深い人でないと理解ができないと思います。
フィクションであるならば、このような作品を作ってもさほど問題はないでしょう。
しかし、現に存在している国際問題に抵触する題材を、解りづらい形で書くのは、プロデューサーとして失策だったのではないでしょうか。
カストロを一人の「人間」として描き、成功もあれば失敗もあり、良心もあれば、非情なところもあった、とするのであれば、やはりオリジナルでしっかりと作ってもらいたいところです。
そのような作品であったならば、きっと評価は大きく違ったと思います。
映画を見たら欲しくなる作品。 曲を聴いていると、あの場面が頭に浮かんできます。
ゲバラへの知識と言えば、キューバの革命家、 グッズとしてのゲバラ、のみでした。 南米のロードムービーと言うこともあり、旅好きなので 何の気なしに見に行きましたが、すばらしい作品。 今まで見た映画の中でも1,2を争います。 医学生だったエルネストは、年上の友人、アルベルトと共に、 古びたバイクで南米を放浪する。 その旅で出会った様々な人々(民族)、ハンセン病の 権威の先生・患者たちと触れ合ううちに、 エルネストは、自分の将来の方向性を感じとっていく・・・ エルネストのすごく人情にアツイ姿にはココロ打たれます。 特に、ハンセン病療養所での行動には、革命家としてリスペクトされる 彼の資質を、強く感じました。もちろん、アルベルトのたまに ズッコイですが明るい行動の中にも、強い志を感じさせられます。 映画は90分がベストなのですが、2時間越えに気づかない程夢中になりました。 自分も何か、行動に出たい。旅に出たい。 すごく感銘を受けた、そんなゲバラのことをもっと知りたい。 そんなキモチでいっぱいになります。 話だけでなく、俳優さんたちもすばらしい演技でトリコになります。
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