「乙女ちっく路線のイラストで人気を得ていた『りぼん』は、1970年代後半に入ると女の子だけでなく、男の子の愛読者も多かった。」って書いてあるんだけど、まさにボクがそう。中二の級友に「キャンディ・キャンディ」を教えられたのをきっかけに、最初は「なかよし」を買っていた(「キャンディ」第4巻の分厚さが懐かしい!)。で、やっぱ「なかよし」はちょっと幼くって、「りぼん」も買うようになり、そのうち「りぼん」だけを毎号買うようになった。まさに乙女ちっく派〈ふろく〉三羽烏の陸奥A子、田淵由美子、太刀掛秀子の全盛期で。高校の男子には太刀掛秀子が人気で、ボクもよくノートにそれ風のイラストを書いて級友に自慢げに見せびらかしたもんだ(後から見たら超ヘタクソなんだけど)。ふろくのレターセットは女の子との文通に使ったりした(恥)。まぁ、当時、急激に男子は幼くなったんだよ、実感として。ゼンキョートーの熱さもシラケ世代のシニカルさもなく単純に幼いという。 当時、「りぼん」とは別の一派として勢力があったサブカルが「OUT」。「ヤマト」と「超人ロック」ね。「スタートレック」とかもフォローしてて、オタクの走りだよなぁ。もとい、男の子が少女まんがを好んで読む一方で、一部の女の子が「ボク、ボク」言う時代でもあってさ(ex.高橋亮子「つらいぜ!ボクちゃん」 、松本ちえこ「ぼく」)。男子が少女性に憧れ、女子が少年性に憬れたって一時期があったんだよね。まぁ、モラトリアムの自己肯定ってことなんだろうけど。この本に出てくる「りぼん」の表紙やふろく、「あっ、この表紙の号は買った!」「このふろく知ってる!」の嵐で単純に懐かしかったし、あの時代って何?ってあらたな謎を突きつけられた気もする。 もっと幼少の記憶として、(母親の持ってた洋裁の本にイラストが載ってた)内藤ルネも懐かしいんだけど、この人、すごく今っぽい。ちょっと発見である。
以下の文は敬称略で。
田渕由美子は、70年代後半、りぼんを中心とする「乙女ちっく」少女マンガの黄金期の立役者。と言っても、その当時のマンガは「フランス窓便り」くらいしか知らないんですが。それから20年あまりの時を経て、すっかりベテランになった彼女の短編集がコレです。個人的には、ここに収録されてる作品の方が、ずっと好きです。
陸奥A子にしてもそうなんですけど、主人公は、作者と同年代で、描かれてることは、身の回りのディテールだったりするところは当時と一緒。でも、やっぱり色々な経験を経て、苦い思いなんかもしながら大人になっていったかつての乙女達。それでも、彼女達にはやっぱりどこかにかつての「夢見る少女」の部分がのぞいてる。それを描くのがやっぱりすごーくウマくて、僕のようなオッサンが読んでもやっぱりジーンと来てしまう作品ばかり。
中でも、不倫を清算するために一流企業を去ったヒロインと大学生のゆきずりの恋愛を描いた「ジョンとメリー」がお気に入りです。大学生の恋人の設定とかがね、いいですね。カワイイけど、ワガママで利己主義的なこういう若い女の子、いそうだもんなあ。
あんまり本屋で見かけないですけど、田渕由美子を知らなくても、少女マンガが好きならハズれなしの作品集です。
私が中学生の頃、愛読していた作者の一人、田淵由美子さんの作品。 どの作品も優しさに溢れた作品ですが、この作品は、その代表作の ひとつでしょう。 女の子3人の共同生活、その三人の恋の物語をコミカルに優しく 描かれています。こんな、学生生活を過ごしたかった…
この文庫には主に80年代のマンガが収まっています。どれも繊細で、どこか危ういかもしれない素晴らしいマンガ。田渕先生はマンガ家というよりも詩人なのでは。
いわゆる乙女ちっくマンガ。ですがその枠でしか語られないわけじゃない。確かに私みたいにオトコで田渕さんのマンガを読むのは少ないかもしれませんが、内容はどのマンガも非常に詩的。
かつ、現代的だと思います。80年代の作品ですが、ちゃんとその時代の絵になっています。2012年の今でも読めます。
なおこの文庫の解説は田渕さんご自身です。
小学1年生から「りぼん」を読んで字を覚え、6年生で「なかよし」を読み、
中学高校時代はコミックは読まなかった気がしますが、
大学では「別冊マーガレット」を好きな男の子と回し読みをしていました。
フリーで仕事をしていた時には小学館の「ちゃお」の編集にも携わっていた「わたし」を、
消えかかった記憶から呼び戻してくれた「林檎ものがたり」。
「写植の級数」とか「チェリッシュ」とか、若い方はなにそれ? と思うでしょうね。
ファションも当時を思い出させますし、四十代以降の方なら、
きっと泣いてしまうくらい懐かしい気分に浸れると思います。
あの頃は安い林檎をよく食べたこと、ちょっとしたことで泣いたり笑ったり、
うれしい時には天にも昇る気分になれたこと、
色々なあの頃の「わたし」を思い出させてくれました。
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