シリーズ当初から懸念となっていた、自分の奥さんの殺人事件に着手します。その真相は・・・・。読んだ直後は悲しすぎて、言葉にならない。これでシリーズは終わってしまうのか。沢木検事の活躍をもっと見たいです
いつも考えさせられる題材が織り込まれた時代小説です。 今回は青柳剣一郎の嫡子で見習い与力である剣之助を中心に物語が展開します。 親譲りの非凡な才能を見せる剣之助は、悪徳な金貸しの主を殺し、近隣の一人暮らしの女を人質に立て籠もった、その殺された金貸しの使用人を捕縛する一件に加わります。 事件は、借金の催促と取立が厳しいことで評判の悪い金貸しの主を殺したその使用人が自殺し、人質も無事解放され幕を閉じます。 しかし、剣之助はあっさりと解決した事件に違和感を感じ一人捜査を進めます。 剣之助が先輩与力によって解決済みである事件を掘り返すことで、彼が奉行所内で孤立することを案じた剣一郎は、妻の多恵の意見を聞き入れ文七に探らせます。 剣之助と文七は協力して次第に事件の真相に近づきます。 しかし、事件の真相に近づくことが、逆に、貧しくとも健気に市井に生きる人々から、その幸せを奪うことになるのでは、と想い悩みそして迷います。 美しく成長した娘「るい」の縁談話から目を背けながら、子を想う父として、そしてまた切れ者の先輩与力として、剣一郎が剣之助の苦悩をどう救ってやるのかがポイントです。
朱雀太郎と名乗る凶悪な盗賊団が大店を襲い殺人、火付けを繰り返します。 奉行所と火盗改の必死の探索を尻目に盗賊は次々に犯行を重ねます。 朱雀秀太郎と名乗った今は引退し床に臥せっている盗賊の親分は、 朱雀太郎なる盗賊団を探らせるために右腕の七兵衛を江戸へ向かわせます。
一方、一向に解決しない凶悪事件に業を煮やした幕閣は、青柳剣一郎に挑戦的な旗本を新たに火盗改に任命。 奉行所、二つの火盗改、朱雀秀太郎の右腕七兵衛が朱雀太郎一味を追います。 功を焦る火盗改と町方の面目を賭けての探索は二点三点し盗賊団の姿をなかなか絞ることが出来ません。
一味の一人である御家人を捕えた火盗改は拷問と弱味に着け込み自白を迫りますが上手く進みません。 しかし、青柳剣一郎はその御家人の優しい心を大切にすることで自供を引出します。 青柳剣一郎の人を大切にしながらの丁寧な探索がやがて盗賊一味を追い詰めて行きます。 敏腕与力も相変わらず娘「るい」の縁談に、おどおどしながら市井を歩いております。
将来を誓った好きな女のために、
貧しい中、辛く苦しい日々の生活にも直向に生きる男。
美しいが故に大店の跡取り息子に望まれ男を裏切ってしまう女。
男は自分を裏切った女を殺そうとするが未遂に終わる。
奉行所に捕らえられた男を哀れみ、与力青柳剣一郎は何とか命だけは助けてやろうと動く。
しかし、男は終始一貫して殺人の動機を変えない。
一方、金につられて真実を曲げて証言する女と女の家族、そして近隣の者達。
貧しく悲しい江戸に暮らす庶民を助ける与力や同心の活躍がすばらしい。
|