召使いとして生きる女の子の話。セリフが少なく音楽やテンポで進んでいき、映像だけで十分描写が出来ているのでとても見やすい映画。
仕事の合間に蟻や蛙の動きに目を奪われているシーンは、日常生活の中でふっと自分の世界に入り込んだときの感覚に似ていて、女の子の心の浮遊が感じられる。こういったささやかなことを描ける映画は気持ちがいいですね。
風景描写、心理描写が優れていた分、後半の恋の顛末は少し安易な感じもする。セリフがない分男の残酷さが際立っていて、なんだか余計な心配をしたくなる。でも、たぶんこの子は生活の中でちゃんと自分にとっての“たのしみ”を見つけていくだろうと思う。
感覚的な部分が優れているせいか、物語としてはパターンを借りてきたようになってしまっている。料理は本当においしそうだったな。
前作「青いパパイヤの香り」で、トラン・アン・ユン独特の 退廃的な世界に圧倒されたが、この作品は退廃っぷりはその上 を行っている。魔都サイゴンの暗部を、これでもか、これでもか と抉り出してくる。 この作品を観ると、ベトナムに行きたくなくなるかも。
邦題「青いパパイヤの香り」のサントラです。この作品は1950年代びベトナム・サイゴンでの奉公人の少女の成長を通して料理や芸術なども垣間見える内容です。このサントラも穏やかな民族楽器やピアノを主体とした音楽が散りばめられ、涼しげな休日の朝などに聴いてもいいと思います。
三人姉妹の末っ子を演じるトラン・ヌー・イエン・ケーは、
青いパパイヤの香りでも 際立った美しさと存在感を観せてくれたのだけれど、
今回は すこし成熟した女性になって またソノ美しさで
画像の上をヒラヒラと 風の様に 舞い散る桜の花びらの様に舞い踊る様。
カノジョは、ベトナム系フランス人の監督 トラン・アン・ユンの
奥様でもアルのです。
ソノせいか、トラン・ヌー・イエン・ケーの 美しさが
丁寧に丁寧に 愛情を込めて 撮られているような 気がする。
澄んだ 美しい色合い と陰影が 印象的な映画。
ベトナム独特のライムグリーンとレモンイエローを中心に
ベトナム女性たちの 艶やかな黒髪と黄色い肌、
圧倒的なまでの自然の緑、
土の色や 朱肉のような ヤヤくすんだ強い主張を持つ朱色、
淡い光、影、透き通るような 蚊帳やアオザイの白。
取り分け印象的なのは、青いパパイヤの香りでもソウだったけれど、
インテリアと お料理のシーン。
塗り直し何層にも塗り重ねられたペンキの層が
所々剥げているままにまかせた
年月が創る微妙な色彩の漆喰壁や 観音開きの窓枠。
ハラハラと風に揺らめく 白くて薄い蚊帳や
染めというより印で押したような花柄のカーテン代わりに
窓に添えられているだけの 風に揺れる 薄い布の数々。
花ではなく、「緑」を飾り 熱帯系の植物の葉や
まだ 蓮の蕾のみを束にして
おおきな花瓶に無造作に 生けられていたり、
台所はきまって 屋外に設置されていて、まるで ジャングルのように
青々と生い茂った緑の中で 小鳥たちのさえずりをバックミュージックにしつつ、
女たちは 自分たちでも 歌を歌ったり おしゃべりをたのしみながら
ゆっくりと 丁寧に 食事を作っていく。
ひとつ ひとつのシーン 取り巻く空気 すべてに
ベトナムとハノイの「美」が 渦巻く。
「シクロ」の撮影の合間に訪れた ハノイを監督が気に入り、
ハノイの 雰囲気をそのまま 映像にしたかった。
というトコロから コノ映画は はじまっている。
前作「青いパパイヤの香り」とおなじく、
ホトンドのシーンをフランスに組まれた
セットの中で撮影されているソウなのですが、
セットの中で撮影された場面がアルとは 想えず 驚くばかり。
世代の違う 三姉妹の 人生体験と恋心を中心に描かれる 作品。
秘密、裏切り、誘惑、失望、戸惑い、誤解、疑惑、決意、別れ、
そして 信頼と絆。
恋する女性っていうのは、いつだって 哀しいくらいに美しい。
コノ映画を 集約しているのが、エンディングテーマ
何度も何度も巻き戻して 聴きました。
「青いパパイヤの香り」と変化したトコロは、「音楽」かも。
シーンシーンに合わせた ロックテイストの曲の使い方が
絶妙な選曲で、映画を盛り立てています。
コノ作品は、
妻 トラン・ヌー・イエン・ケーと 愛娘 ラン・エーに捧げられています。
ソコに 監督のコノ作品への 想い入れと満足が 垣間見れるような 気がします。
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