コンセント
田口ランディは屋久島やベトナムの紀行文・エッセイを中心に読んできたが、実は、この「コンセント」シリーズが彼女をメジャーにしたのだと最近聞き、初めて、手にした。
私はあまり小説が好きではない。
「事実は小説より奇なり」が信条で、太宰治や「ワイルドスワン」「沈まぬ太陽」のような、事実がかなり大きな部分を占めるものしか、パワーを感じないのだ。
そんな私が、この「コンセント」にはパワーを感じた。彼女の私小説的な部分がベースになっているからかもしれないが、まさに「繋がった」感じがした。
男性作家の手により、どこか女性には空々しい感じで描かれる事の多いセックスシーンも、彼女の本の中で、女性の説明の付かない衝動的本能として、ためらい無く等身大で描かれている。
また、人間の精神やその変容が、コンピューターのOSやディスクやアプリケーションに喩えられ、説明解説されているのも今日的だろう。
普段PCに接している人ほど、PC用語に喩えられた彼女の小説は身近なのではなかろうか。
また、金融に対しての、主人公の感覚も、非常に金融が生き物のように感じられ、興味深かった。
そういったディティールの面白さもあるが、やはり、何より、小説全体が中だるみ無く面白いものだった事が第一。3部作を読みきるのが楽しみになってきた。