遺体―震災、津波の果てに
3・11東日本大震災によって岩手県釜石市も甚大な被害を受けます。しかし他の被災地と異なり釜石市は、海沿いの地域が壊滅状態であったにもかかわらず、内陸部は津波の直接的被害を受けず、市としての機能が残ったという点に特徴があります。
そのため、多くの釜石市民が顔見知りの人々の遺体を発見・収容し、身元確認をし、そして弔うという特異な使命を帯びることになりました。他県からの応援によって同じ作業を行った地域では見られない、同郷者が同郷者の死を極限状態で見つめ続ける日々。これはそのおよそ3週間のルポルタージュです。
著者は自らレンタカーを駆って釜石に入り、膨大な数の人々に取材をおこない、そしてそれぞれの市民の視点で出来事を綴っていきます。
市民の多くは遺体など普段それほど頻繁に目にすることはありませんし、ましてや触れたことなどありません。未曾有の自然災害によって激しく傷んだ遺体が次々と安置所に運び込まれ、その対応に追われる消防団員や市役所職員、医師や歯科医、そして僧侶たちの心は打ちのめされます。
それでも彼らは犠牲者のため、そして遺族のために、体力と精神力の限界点まで歯を食いしばって遺体を丁寧に大切に扱って行きます。知人でもない遺体にまで、やさしく声をかける人々の姿が胸に迫ります。
ルポの後半では、対応できないほどの数の遺体を前に、そして岩手県内の火葬場の実情を踏まえて、遺体の土葬に踏み切るべきかどうかの決断を迫られる行政府の姿が綴られます。衛生上の問題からも土葬やむなしとする判断。しかしそれでは満足な弔いとは言えないとする遺族たちの心情。そのせめぎ合いの中で行政は苦悩します。
遺体という事象にこだわった濃密な取材は、テレビのような映像メディアではなかなか取り上げることが難しいものでしょう。ですから3月以来テレビでは震災報道にかなり接してきたつもりの私にも、こうした人々の苦悩と尽力が被災地で繰り広げられていたことを改めて知って驚くとともに、ただただ頭の下がる思いがするばかりです。
南極越冬隊 タロジロの真実 (小学館文庫)
作者は1957年の第一越冬隊、そして59年の第三次越冬隊に
犬係として参加をした北村泰一氏。
題名には「タロジロの真実」と書かれていますが、
そこにスコープされたものではなく、
日本人として初めて過酷な冬と戦いつつも、
まさに前人未到の冒険をなしとげた人々の日常が、
耽々と描かれえています。
ただ、その耽々がすごい!
真冬の南極の地を、まだ誰も行ったことが地域を調査するため、
基地から飛び出し、さらに南極大陸の旅に赴く作者。
その中で気温マイナス10度だと温かいという。
そんな過酷な自然の中で、人もそして犬たちも、
夢の冒険を果たし、そして「生きる」ために闘った日々。
第一次越冬隊がどうして犬たちを連れて帰れなかったのか・・・
それについてもここでは詳しく語られています。
今の世の中いろいろなことがとっても便利になり、
情報社会の中、未知のものもかなり少なくなってきています。
がそれと同時に、人をこころから突き動かす夢も少なくなってきている気がします。
でも今から50数年前にはそんな夢があり、
一人の若者がそれに挑戦をしたそんな証が綴られている一冊です。
人体解剖マニュアル 完全版 DVD-BOX
ビデオの内容については他レビュアーさんを参照していただくとして。
内容がグロテスクなものを占めますので、そういうのが平気とか学術的に見る必要がある学生さんらは大丈夫だと思います。
でも私のような単に興味本位で買ってしまった場合、視聴するのが非常に苦痛かつ困難(私の場合、1本観て知人に売却した)です。
人によっては悪夢に苛まされる可能性もありますので、買う場合には覚悟が必要です。
交通事後の検証とかかなりグロいですので。
ネヴァーマインド
あまりに多くの人に親しまれたために多くの誤解を生んだ名盤。
ポップファンにとっては重くて暗く感じるだろうし、グランジファンにとってはポップで音が洗練され過ぎているように感じるだろうし、メタルファンにとってはテンポが遅く音も軽く感じるだろうし、パンクファンにとっては重くて軽快さがないと感じるだろう。
音は重くボーカルのシャウトが際立ち、全体的な印象は暗い。ダークなコード進行のなかに絶妙なメロディーがのり、ポップな印象を与える。一つ一つの曲は完成度が高く、バンドとしてのサウンドも非常に洗練されているという印象を受ける。多くの人に受け入れられ親しまれる完成度と魅力があるように思います。この作品はこれからも多くの人に聞かれ、そのためにさまざまな賛否両論を生んでいくと思います。
評価は個人的な好みで星3つ
人体解剖マニュアル ~一目でわかる人体の不思議~ DVD-BOX
一見した内容は、医師・医学生には物足りず、一般の方には敷居が高いような印象を受けました。ただし、何度も見返せば解るレベルだと思うので、購入しようと考えるほど興味がある方ならば大丈夫でしょう。また医学生にとっても、新鮮な状態のご遺体を使っての説明など、通常の実習では行わない様子を観ることが出来ますから、損ではありません。
難点も幾つかあります。カメラのピントがなかなか合わず、観たいものも観れない事があります。また、手技・説明に集中したいのに所々で受講生の顔が映される点もストレスを感じました。中には笑顔の受講生もいるので、「けしからん!」と腹を立てる方もいらっしゃることでしょう。
最後になりますが、こういった専門的な映像作品が一般の店でも購入できるようになったということは素晴らしいと思います。値段もそう高くはありませんし、知的好奇心をそそられる方は是非どうぞ。