ヤヌスの鏡 3 (集英社文庫―コミック版)
実母の死以来、祖母に厳しく育てられたヒロミは
ある日子供の頃の鏡の中のともだち自由奔放なユミの事を思い出す。
やがて身に覚えのないケガや、知らない人間達がかかわってくるようになり・・・。
ヒロミと祖母の関係が妙にゆがんでいるだけじゃなくて
ヒロミ自身がイライラの元なので、どうしてもユミにスッキリ感を求めてしまいます。
社会性を無視したやりたい放題は、世間のしがらみや人間関係で
がんじがらめの現代人にはちょっぴりうらやましいというか
「あたしの邪魔をするものは許さない」とか「あたしは服従するのがいやな人間なのよ」とか
言えるもんなら言ってみたい。
ラストは素晴らしいです。それでどうなるの???と思わせといて、
でもどちらが目覚めたのかを明かしてしまうとそれはダメなのよね。
大映テレビ ドラマシリーズ ヤヌスの鏡 前編 [DVD]
ちょうど前年の1984年『不良少女とよばれて』が大ヒットしたことに味をしめて以来『乳姉妹』『ポニーテール』と不良モノをこれでもかと連発した大映が引き続き不良路線として白羽の矢を立てたのは、漫画原作(こともあろうか女子中高生向け週刊誌セブンティーン連載のやつ!)、しかも主演はアイドル歌手デビューを間近に控えた右も左も分からないミドルティーンのかわいらしいオボコ、杉浦幸。
役柄にどうもそぐわない感ありの杉浦さんを軸に放送は無理矢理スタートしたものの、初回から視聴者の不安は的中、杉浦さんの演技もドラマ自体の内容も正直申し上げてなんだかユルいんです。これが何話かまでしばらく続きます。放送当時、早々に失敗作と判断して観るのをスッパリ止めてしまった人も少なくなかったに違いありません。
だがしかしその判断は、結果として時期尚早であったと言えましょう。
なぜなら、当初あんなにへったくそだった杉浦さんの演技が回を追う毎に研ぎ澄まされて行き、それと呼応するかのようにストーリーの輪郭もハッキリし始めて、「素人アイドル」「一介の少女漫画」という安易な先入観によるナメ切った先行き予想に反し、ドラマそのものがあらぬ方向へ動き出すからです。これぞ80年代大映ドラマの神秘とでも申しましょうか。とにかく凄いんです。
やはり特筆すべきは杉浦さん演ずる大沼ユミ。
最初の佳境は包帯を取る所。続くは抱擁場面。ゾクッとするような冷たく妖しい目つき、これらのシーンで杉浦さんはいつまでもユル加減抜け切らないぬるま湯出演の壁を木っ端微塵に打ち砕き、本物の大沼ユミとして開花します。
そして佳境は問題の階段ロケーション、はたまた病院にまで広がります。
このドラマは異様に視聴者のボルテージが上がる佳境がいくつもあるんですっ。
ということで、この前編DVDではここまでが観られます。あとは後編DVDに続きます。
話はこんなもんじゃ済まない突拍子もないベクトルへ突き進みます。
余談ですがこのDVDのジャケットのレイアウト、
ヤヌスの石像と小沢裕美を左右半々にしたのを前編、
同石像と大沼ユミを左右半々にしたのを後編にしたら
ドラマの主旨とマッチしてもっと雰囲気が出たのではないでしょうか?
増刷の際はぜひそれでお願いします〜
大沢逸美親分や宮川一郎太さん、中村晃子さんバージョンも枚数限定とかで良いかもしれませんね。
ヤヌスの鏡 1 (集英社文庫―コミック版)
ものすっごく厳しい祖母のしつけを受けて育った臆病でおとなしい女子高生ヒロミに、実は夜な夜な盛り場をうろつく不良少女ユミという別の人格が隠されているというストーリーです。このユミが面白い。盛り場をうろついて何をしているかというと、派手な格好をして独りで飲んで独りで踊ってる。奔放といっても孤独です。そして異様にケンカが強くて、自分の邪魔をする人間は平気で殺す。不良少女というよりヤクザの姐さんのようです。80年代ファッションもなつかしく楽しめます。 二重人格の一方ユミの活躍を少女マンガらしくドラマチックに描いた作品で、絵もきれいで飽きさせません。そしてときどきいいセリフがあります。「それはあんたが見たいと思ってるあたしなだけよ。人は自分の目というフィルターを通した虚像しか見ることはできないのだから。それぞれ愛したいと思うものを、憎みたいと思うものを。表面だけをきれいに写しだす鏡のように」
もうひとつ、この作品の外伝もお勧めです。この主人公の二重人格の原因となったと思われるオニのような祖母タカの、若き日のお話。華族の母の血を受け、気位が高く感情を抑え建前を通して生きるタカに向かって、妾腹の妹が言い放つ言葉:「あなたは自分が何を望んでいるのか分からない方ですものね」、ラストはじわっと重く怖い。
大映テレビ主題歌コレクション~フジテレビ編
80年代中期から90年代のフジテレビ水曜8時の時間帯を独占した大映ドラマの主題歌集!
ホントに懐かしいです!
あの時代、テレビに噛り付いて番組を見ていた自分を思い出させてくれます!
同時発売されているTBS編とあわせて買うことをぜひおすすめします!