神州纐纈城 (河出文庫)
最初に読んだのは桃源社「大ロマン復活シリーズ」だった。
たぶん、シリーズの最初の刊行が本書だったと記憶している。
同シリーズは小栗虫太郎、海野十三、橘外男などの当時は入手が難しかった諸作を復活させ、再評価の機会を与える優れたものだった。
さて、本書である。
国枝伝奇の白眉とされているが、その錯綜したストーリーは確かに伝奇物といって間違いはない。
背景には父子や兄弟の相克が描かれており、著者はあまり意識してはいなかったのかもしれないが、裏テーマといえるだろう。
だから、ある意味では家族物とも分類できないこともない。
ただし、もっとこのテーマが深く掘り下げられていたら、という条件がある。
もし、本作が中絶ではなく完結していたら、はたしてどのような結末になっていたのだろうか。
著者のイマジネーションを考えると、とても予想することはできない。
しかし、本作の読後の余韻は、未完だからこそのものであるのも、また確かなことなのである。
これは著者の「蔦葛木曽桟」とは異なり、まったく集束の気配のないままの中絶という本作の状態は、余韻を感じるのとともに、突然空中に放り出されたような、非常に不安定な気分になることは間違いない。
かなりグロテスクな内容であり、描写もかなりエグい。
しかし、大衆文学のある方向に極端にふったという意味では、大衆文学の歴史を知る上でも意味のある作品であり、一読する価値がある。
そして、その幻想世界の味をしめると、また再び味わいたくなるという、麻薬のような魅力を持った作品である。
神州纐纈城―国枝史郎「神州纐纈城」より (1)
あの神州纐纈城を、あの石川賢がマンガ化!
完全描き下ろしで全ページみっちりきっちりびっちり
ハードでバイオレンスでアナーキーな石川賢世界が堪能できます。
しかし全四巻でページが足りるの?
神州纐纈城(下) (講談社漫画文庫 (い2-13))
時は戦国。霊峰富士の裾野に広がる密林を抜け、本栖湖湖上に聳える纐纈城。そこに住まうわ悪鬼羅刹の群れ。城主としか其の名を知られない仮面の男は業病を患い、その治療の妙薬を得るために、近隣の村々から人々をかどわかしては、その生血を絞り臓腑を食らうという。
纐纈城を脱出した甚太郎は、謎の思索家光明優婆塞に助けられ、辛くも一命を取りとめた。また、三合目の陶器師も優婆塞と出会い人切りができなくなる。
そして。。。纐纈城を生きて脱出したことがあるもう一人の男、蜂須賀小六の手引きにより、纐纈城を攻め入る織田信長の軍勢。
霊峰富士に抱かれた幽玄の魔境纐纈城にも、戦乱の炎は燃え広がる。そしてそれは、日の本の国を破滅に導く導火線になるのか!
常人なら近づいただけで爛れ死んでしまう纐纈城城主対織田機械化軍団。その激戦をよそに、正三郎は再び纐纈城を目指す。。。。次の城主となるために。。。。
数奇な運命に導かれ、複数の勢力が纐纈城を中心に、石川タイフーンとして荒れまくる。一気呵成に読み上げるべし!
神州纐纈城―国枝史郎「神州纐纈城」より (4)
完結しないストーリーだからこそ読者の想像力を刺激し傑作として読み継がれてきた小説を、完結しないイマジネーションの奔流を描き出す石川賢がコミック化。爆発力二乗。まさしく石川賢にしかできない世界。
感動させない。圧倒させる。捻じ伏せる。