イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)
’98年、『Jの神話』で、講談社が主催する新人ミステリー作家の登竜門「第4回メフィスト賞」を受賞してデビューした乾くるみ。静岡県の出身で、ペンネームから女性に間違われることもあるが男性。本書は、’04年4月に原書房のミステリー叢書<ミステリー・リーグ>のラインナップの一冊として刊行。圧倒的な話題を集め、’07年4月に文庫化され、順調に版を重ね読み継がれている“伝説”のベストセラーである。
’04年、「このミステリーがすごい!」国内編で第12位ランクインしている。
本書のことはタイトルと著者名だけは知っていたが、読もうと思ったのは、ある夜「BS11」の≪ベストセラーBOOK・TV≫を観ていたらゲストの某出版社の人が、昨今のミステリーの特長の最たる例として本書を挙げて、「普通の恋愛小説だと思って読んでいたら、最後の最後にこの本はミステリーだったんだと知る」と言ったのがきっかけだ。
なるほど、’80年代後半と思われる時代の‘僕’こと「たっくん」と「マユ」との甘くほろ苦い恋愛物語が、当時の流行・風俗・ファッションにのせて、また、ミュージック・アルバムを模したside-A、side-Bと’70年代・’80年代のヒットソングのタイトルを冠した各章を追って展開される。
そして・・・、最後から二行目と大矢博子の解説を読んで、乾くるみの企みを初めて知ることになる。なるほど読んでいて少し妙だなというひっかかりはあったのだが・・・。
それにしても、ちょうどその同じ時代、私も20代後半だった頃を懐かしく思い出して、ふたりの恋の行方に胸をつまらせ、“身を焦がすような”恋愛小説として本書に没頭してしまった自分は何だったんだろう。
山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと (朝日文庫)
8年間の奇跡を過去のデーターや関係者の発言(著書より引用等)・百恵さん自身の発言(自署「蒼い時」よりの引用含む)で多面的にまとめられている。
引退前のラジオ番組「夢のあとさき」(半年間の放送)で百恵さんが自身を振り返る「ザ・ストーリー」からの引用があれば、さらに総体としての「山口百恵像」に迫ることができたのでは?と残念でならない。