科学の世界と心の哲学―心は科学で解明できるか (中公新書)
心は科学的に説明され得るか、という哲学上の問題を解説した本。まず「科学的に説明する」とはどういうことかをアリストテレスまでさかのぼって議論するというかなり硬派な本でもある。最近の心の哲学の動向までふまえて、かなり本格的な議論が展開される。
著者がデカルト研究者であるためか「デカルトに帰れ」という結論になっているけど、たしかに物的因果と心的因果を峻別したデカルトの思想は、極端な還元主義と神秘主義をともに退ける効能を持っていて、自然科学の立場からは受け入れやすい。(著者の好意的な読みに乗せられている可能性を差し引いても)
ところでこの本の中では触れられていないけど、コンピュータの登場以降、「情報」には物理法則とは独立にそれ自体の法則性があり、しかもそれは科学的に探求可能だとする認識が確立したと思うけど、その情報独自の法則性こそがデカルトの(著者の理解する)心的因果に最も近いものなのではないだろうか。そのあたりの見解を知りたい気がする。
デカルト入門 (ちくま新書)
デカルトの入門書としては最良のものだと思います。
何より彼の生い立ちからエピソードまで豊富に盛り込んで
あり全くデカルトを知らない人でもおすすめできます。
デカルトの科学思想、数学思想と哲学思想が密接に
結びついていることを理解できます。『規則』についての
分析は非常に勉強になりました。本書から更にデカルトの
諸著作にダイレクトにすすめることができると思います。
日本の心を唄う 現代日本歌曲選集 第2集
ヴェルディ・レクイエムの「ラクリモーサ」を独唱した際、あまりの絶唱に女声パート全員が涙を流し歌えなかったという逸話を持つ大歌手柳兼子が、老境に入って録音したレコードのCD版である。日本歌曲史の中に埋もれてしまうかと思われたこの録音が21世紀になっても聴ける。生きててよかった。往年の大歌手が声を失った代わりに到達したのは直接こころにとどく孤高の芸術だった。私も涙と共に聴かずにはいられなかった。遠くから聞こえてくる「いずれの日にか国に帰らん」の一節など、嗚咽とでもいおうか、望郷の一念をここまで歌い上げた歌唱を私は知らない。
オーロラストーリー~星野道夫・宙との対話~
作者の小林真人氏は、星野さんのファンでもあるそうで、 また、彼自身自然への造形の深い作品を数多く作曲しています。初めて聞いた時には、涙が止まらなかったです。心を豊かにする一枚です。星野さんの世界を、さらに深く心に刻む事間違いなしです。