瞼の母―長谷川伸傑作選
瞼の母、沓掛の時次郎、番場の忠太郎、一本刀土俵入り、聞いたことがあり、少しは知っているけど、ちゃんと読んだことはない、これらの作品は文庫などはほとんど入手困難になっている。この3冊の長谷川伸選集は値段も手ごろで、代表作が網羅されている(長編除く)。よほどディープなファンでなければ、この第1巻だけで充分に長谷川伸通。
以前、ラジオのオールナイトニッポンのあとに放送されていたと記憶する「おはよう名作劇場」(?)でつい聞いて、うっかり感動してしまったことが思い起こされ
る。(わかるかなあ)
日本敵討ち異相 (長谷川伸傑作選)
時代劇のパターンの全ては長谷川伸が書いてしまった。
だから、時代劇を書くものは皆一度長谷川伸に戻らねばならない。
そのもどるべきひとつが本書である。
長谷川伸(明治17年(1884年)3月15日 - 昭和38年(1963年)6月11日)
主な作品
『関の弥太っぺ 』1930
『鼠小僧唄祭 』 1933
『刺青判官 」 1933
『沓掛時次郎』1935
『瞼の母』 1936
『国定忠次 』1947
『切られ与三郎 』1948
『殴られた石松 』
『稲葉小僧』
『日本捕虜志 』
『まむしのお政』
『四条河原の荒木又右衛門 』
『一本刀土俵入り』
『日本敵討ち異相』
長谷川伸論―義理人情とはなにか (岩波現代文庫)
一宿一飯の恩義とはこう言うことで、これに美学を感じるのが長谷川伸の描く日本人である。
著者初『沓掛時次郎』から、長谷川伸の書いた台詞を引く。
時次郎が三蔵と出会い、決闘の名乗りをする。
時次郎「あっしは旅人(にん)でござんす。一宿一飯の恩があるので、怨みもつらみもねえおまえさんに敵対する
信州沓掛の時次郎という下らねえ者でござんす」
三蔵 「左様でござんすか。手前もしがない者でござんす。ご叮嚀なお言葉で、お心のうちは大抵みとりまするでござんす」
これだけの台詞で観るものに全てをわからせる凄さ。一宿一飯の恩のために時次郎と三蔵は命の遣り取りをするのである。
ブロードキャスト・トラックス TBS編
ザ・ベストテンは先般発売されたベストテンCDの黒柳&久米のタイトルコールの無いバージョンで、音楽を純粋に楽しめます。たけし城は途中でフェードアウトするので訳が分かりません!最後まで収録してほしいものです。ふしぎ発見は現在のもので、番組開始当初のものではありませんので残念!Gメンにいたってはレコードバージョン収録と残念のオンパレード!「クイズダービー」や「100人に聞きました」「わくわく動物ランド」はどうして収録できなかったのでしょうか。こんなことなら版権のOKが出るまで粘って、いい商品作りをしてもらいたかった。ベストテンの音楽以外、私には買う価値のないCDでした。
瞼の母 [DVD]
何度も映画化及び舞台化されている、長谷川伸原作による股旅ものの名作で、本作は加藤泰監督と萬屋錦之介コンビによる、昭和37年の傑作。今はやくざに身を持ち崩している忠太郎だが、幼い時に別れたままで、まだ見ぬ母への思慕は誰よりも強い。そこで彼は江戸へ母を探しに行くことにする。そして苦難の末についに母と思しきひとに巡り合うのだが・・・・。
番場の忠太郎を演ずる錦之介さんが実によい。このときまだ30歳になるかならないかのはずだが、この堂々たる押し出しと切れ味はさすがです。松方弘樹さんなんかこの時点ではまだまだ足元にも及ばない。そして松方さんの母親を演ずる夏川静江、盲目の三味線弾きの浪花千栄子、夜鷹の沢村貞子、そしてついに巡り合う実の母の木暮実千代など、熟年女優達がみんな良い!
加藤泰のキャメラの長廻しを交えた粘り強い演出も特筆ものだ。とくに浪花と錦之介のシーンは5分半(!!)、沢村に居酒屋で酒を飲ませるシーンは3分半、そして最大の見せ場でもある、ラストの木暮を訪ねるシーンも最初から3分半、それぞれワンカットで撮っている。これらのワンカットのシーンはすべて見応え十分の名シーンである。木暮は最初は疑いつつも、会話を重ねるにつれて錦之介が実の息子と確信する。しかし婚礼を控えた娘の手前、悩みながらも錦之介を追い出す。そのあと娘に錦之介を連れ戻せと懇願されると、キャメラが木暮の周りをゆっくりと一周回って、心の揺れを表現するがこの演出もさりげなく凄い。恐るべし、加藤泰。原健策や山形勲も好演。つまりは加藤監督は役者さんに見せ場を作るのが、とっても上手いということですね。