3/16事件 (講談社BOX)
「えの素」の榎本俊二氏と「空の境界」「DDD」の奈須きのこ氏が、それぞれオリジナル漫画と小説を作り、それを交換して互いの分野で表現しなおすという競作企画になっている。
榎本氏が描いた「MAGNITUNING」は、年齢職業もバラバラな5人の男性が、コマ割りもなしに紙上を縦横無尽にレースをするというだけの作品だ。何のために走るのかも明かされない。ゴールすればどうなるのかも分からない。
読者に分かるのは、各ページで繰り広げられる、レース障害に対する各人の反応のみ。それだけなのに、ページをつなげるとそれぞれの人生が浮かび上がってくるような気がするから不思議だ。
奈須氏が書いた「宙の外」は、アゴニスト異常症患者の二人を主役に据えた作品だ。最強少女・石杖火鉈と最強ニート・大熊猫目々の邂逅を描く。オリガ記念病院崩壊の時、大熊猫目々の病室を訪問したカナタが見た、病室に広がっていた世界は、4千もの星々を抱える宇宙だった。
そこで繰り広げられる、ふたりのテンポの良い会話と、不条理なまでの超展開、そして最後にもたらされる結末は何か。
そしてこれらの作品を、互いが互いの領域で描きなおしたとき、それぞれの良さを残したまま、それぞれの個性が付け加えられる、かも。宙の外は手塚作品ぽい感じになってしまった気がするし、MAGNITUNINGには5人をつなぐストーリーが出来て論理性が加わった気がする。
普段はあまり読まない領域に触れられて、面白い体験でした。
斬り介とジョニー四百九十九人斬り (KCデラックス)
あの、榎本俊二の待望の新作。
ストーリーを説明しろと言われれば、数行で終わってしまうかもしれない。
しかし、これぞ漫画! 圧倒されるスピード感と大胆なコマ運び。
おそらく、多くの人間には評価されないであろうが(苦笑)、漫画の真骨頂がここにある!!
榎本俊二のカリスマ育児 2 (akita essay collection)
1巻でも弟君は登場していましたが、お姉ちゃんの乳児時代の話が多かったので2巻では
弟君のエピソードが多くなっています。さすがにお姉ちゃんが小学生になると、予想外の
行動や言動で笑える様な事は無くなっていく為、いささかパワーダウンを感じてしまいますが
こう言う漫画はやっぱり初産でのアタフタした出来事の描写が一番面白いので仕方ないのかも。
個人的には、弟君妊娠時のエピソードや子供達の断乳、オムツ外しなんかの話が読みたかった
のですが、無かったのが残念です。育児漫画を読む人は育児経験の有る人・育児中の人が多い
と思うので、そう言う話を読みたい人は沢山居そうな気がします。
とは言え、弟君がハイハイを始めた時の「赤ちゃんアクシデントの見本市」の描写が擬音だけ
で構成されているのが私には一番ツボでした。これぞ榎本漫画のリズム。
アレルギーの為にきょうだい揃って血液検査したり、今回も「本当はすごく大変だったん
だろうな」と思う部分をさらっと描いています。逆に2人の子育てをしながら夫婦揃って
締め切りを抱えている場面は細かく描かれ「わーこりゃ大変だ」とも思いつつも笑ってしまいます。
それにしても、相変わらずお父さんの育児参加が徹底してると言うか、完全に2人で分担して
「やれる時にやれる方が動く」と言う感じでなかなか羨ましい環境です。お姉ちゃんの遠足の
お弁当を夫婦2人で作るってまず無いでしょうから。
途中でお姉ちゃんの書いた漫画が載っている辺りは親バカっぽいですが、彼女がこの先父母の
どちらの影響を受けた作風になるのか、興味深い所です。
学校や保育園の為に榎本が書いたイラストも掲載されていて、中には「それはちょっと・・・
完全にアウトだろw」なモノもあります。
ラーメンズつくるひとデコ
前半がラーメンズを「つくる人」、小林さんの対談集で
後半がラーメンズを「演じる人」、片桐さんがいろんな「ものづくり」を体験しています。
読んでいるとラーメンズにおける二人の役割分担が明確になされているとつくづく感じます。
前半の「計算された笑い」を設計する小林さんと
後半のわりと勢いだけ(笑)な片桐さんの対比が面白く
ラーメンズファンなら買って損はないと思います。
えの素 [完全版] 上 (モーニングKCDX)
ものすごく破壊的なギャグマンガ。
かわいいもの、醜いものを自在に描ける画力も魅力なのだが、
描かれる世界はとんでもなくパワフルで下品でお下劣。
セリフのセンスやコマのテンポもすこぶるいい。
中国とか北朝鮮みたいな変な政治権力があったり、
いまだに宗教が口をはさむ社会ではえの素はありえない。
この作品を許す寛容な日本はすごいんじゃないの。