連載中から、毎朝読むのが楽しみでした。出来る事なら、単行本化しても酒井さんの挿絵をもっと大きく載せて欲しかったです。 最終回近くに震災が起きたのは、象徴的な出来事でした。間違いなく、山田詠美「僕は勉強ができない」同様、若者のための古典文学になると思います。
川上弘美の原作を、主演:沢田研二・坂井真紀、演出:久世光彦、音楽:cobaで音楽劇に。 作中で引用されるのが伊良子清白から萩原朔太郎になっていたり、センセイが朗らかなキャラクターになっていたりと、浮き世離れした場面を除けて「老境に差し掛かった男と若くない女」の恋物語に焦点を合わせている印象。 個人的には、無礼な若い男のピアスを盗る場面や、ふと意地悪になるセンセイも見たかったのですが。 しかしツキコとセンセイの話に主軸が置かれているからこそ、あの切ないラストシーンがある。 また久世氏らしいコメディ要素も随所にあり、全体がほんのりとあたたかい(それは昭和の香りだろうか)。音楽も当たり前のように舞台に溶け込んでいて良い。 時折取り出して愉しみたいDVD。
ツキコさんのキャラクターが、全く恋愛には向かない、 さっぱりしすぎている性格で、 そんな(きっと男性からはあまり「かわいい」とは言えない女性が)、 気が付かないうちに深く激しい感情を募らせていく姿が、 なんともかわいらしかった。 今のとにかく連絡を取り合わなくてはいられない人間関係の 対極にあるような2人の時間の経過。 「愛が育っていく」っていうのはこういうことなんだよな~と、 改めて思う。
この小説には、熊やら河童やら人魚が当たり前のように登場する。そして主人公は、そのことにたいして驚いたりしない。そこにいちいちツッコミを入れたくなるような人には向かない小説。 川上弘美さんの作品を読むのは初めてだったが、本当にいい小説だと思った。 まず、主人公が素直な普通の人であるところに好感が持てる。最近の小説の主人公は、やたら斜にかまえたひねくれ人間が多くてうんざりしていたので、この小説を読んで心が洗われた。 「神様」でほのぼのして、「夏休み」でしんみりして、「花野」で切なくなって、「河童玉」で笑って、「クリスマス」でも笑って、「星の光は昔の光」でいろいろ考えさせられて、「春立つ」で不思議な気分になって、「離さない」でゾッとして、「草上の昼食」で号泣した。 いろいろ楽しめて、とってもお得だ。
心から愛し合った男女の、美しい最期までを、流れるような文体と美しい情景描写で語っていく。 ハードカバーでうすい本なので、読むのにそこまで時間がかからないが、ぐいぐい惹きつけられて、 読んだ後は放心し、涙が出た。
舞台は江戸時代の遊郭で、現代ではうかがい知れない非常に興味深い場所が細かに描かれており、 当時の遊郭独特の言葉もちらほら使われていて、それがよいエッセンスとなっている。
遊郭の描写もあるものの、女性目線から描かれているので、直接的すぎる描写は少なく、うつくしい。
本当の恋とは何なのか、本当に人を愛するとどうなるのか、そういことが、ぬきさしならない状況とともに 描かれていく。
普通の市井で出会っていた男女なら、現代に出会っていた男女なら、相思相愛の幸せな結婚をしたかもしれない。
でもこいういう悲劇の物語は、本当にうつくしいし、忘れられない。
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