何しろこの手のメガネフレームが、1500円で買えるとは思ってもみなかった。質はともかくとして普通のメガネ屋では0が一個多いはずです。
私の以前の丸眼鏡が18000円でしたから。
手元に届いてみるとやはり難はある。耳にかける柄の長さが若干短いのである。曲がっている柄を真っ直ぐにのばすと、なんとか耳まで届いてくれるので、眼鏡屋で検眼したレンズを入れて使っている。レンズ径は、顔の大きい私でもちょうど良い感じでした。
落ちる不安はあるが、楽譜を読む時と、パソコンを操作する時だけの使用なので、今のところ問題はありません。
ドラマではお馴染みの、柴咲コウ演じる内海薫刑事が出演している今回の長編。とは言え、前に出すぎることなく、草薙刑事と湯川博士と3人、良いバランスで話が進んでいく。
聡明で美しい人妻が、離婚を切り出した夫を殺害する。最初からそれを示唆する場面が出てくるにも関わらず、その妻には鉄壁のアリバイがあった。帯にある「これは完全犯罪だ」という言葉の通り、湯川博士ですら殺害のトリックを解き明かすことができないまま話は進んでいく・・・。
今回のストーリーで印象に残っているのは、綾音の人柄だ。穏やかで優しく、頭がよい。非常に魅力的な人物である。その彼女と、この犯罪のトリックが結びついた時、タイトルにハッとさせられることだろう。
トリック自体には、「容疑者Xの献身」ほどの驚きはなかったが、ぐいぐい読めて、続きが気になる、十分楽しめる作品であると思う。
まんまなのがよい!しっぽもあるのがよい!安定感ある!かつ抜ける!パソコン周りの必需品です!
正直、もうススキノ探偵シリーズは書かないのではないかと心配していた読者が大半だったろう。作者が歳を取り、多くのしがらみを世間的に身につけてゆく中で、東直己の等身大ヒーローはもはやススキノ探偵ではないだろう、畝原だろう、そう思う読者は多かっただろう。畝原シリーズは確かに優れている。だが、ある意味重い。あの自由闊達で面白おかしく生きている風来坊のような主人公。探偵ですらないあのススキノ便利屋の小説ももっともっと読みたかったと思う読者もきっと相当に多かっただろう。 シリーズ最新作とは言え、ここまで短篇を含め5作を読破しないと、この作品には辿り着けないはずだ。しかし一ヶ月で再版されるだけの馬力がこのシリーズにはまだまだあったということだ。それだけ待たせていたというのもやはり事実だった。根強い読者層がこのローカルな作家にもきちんと着いてきていたということなのだ。嬉しい。 何しろ『探偵はひとりぼっち』以来だ。最後のセリフは「わたし、お腹に赤ちゃんがいるの」だった。探偵の赤ちゃん。うーむ。そこで急に東直己の筆先は子持ち探偵・畝原に向けられて久しかったわけだ。1998年のびっくり結末以来読者は実に3年も待たされたことになる。なんと気を持たせる作家であることか。 そして本書では驚いたことに探偵は中学生になる息子に仕送りをしている。春子とは離婚している。そんな時間の経過があるかと思う。だが、よく考えてみれば、探偵シリーズはいつも今より少し前の時代、風営法が変わる前、ソープランドがまだトルコと呼ばれていた頃の物語なのであった。ローレンス・ブロックの『聖なる酒場の挽歌』同様に、いつも記憶のカーテンの向こう側にある過ぎ去って懐かしい「昔の」物語なのであった。 それが本書ではいきなり現代なのだ。畝原に作家の主体を持っていたばかりではなく、年齢と家族という荷物とをきちんとススキノ探偵の方にも課していたのだった。 さらに驚いたことにススキノ探偵であるはずの「オレ」が、遥か道北の寒村に舞台を移す。この田舎町の描写が実にリアルで可笑しい。ぼくが思うにモデルとなる町は幌*内ではないかと思うのだが、雪が深く、車で通り過ぎるのに1分も要らない。西部劇に出てくるような一本のメインストリートだけの町。シティでもタウンでもなくビレッジくらいに形容しておいた方が良さそうな町。そこに住む怪しげな人々。夜のバス停にうろうろする女子高生の描写のおかしさ。 うーん、まさに北海道しているのだ。観光や出張でしか北海道に来ない人々に是非お伝えしたい北海道の平均的田舎町の真実、とでも言いたくなるくらいの。 実にいろいろ驚かされてしまう物語であった。やはり畝原にはない行動をこ の探偵は取る。やはりこの後もこのシリーズも続けて欲しい。また回想の昔に戻ってもいい。この作品のように現代に視点を変えてもいい。とにかく続けて欲しいのだ。
シリーズ物で、何作も続いていくと多かれ少なかれ、マンネリ化してくることは免れないように思います。
しかしながら、本シリーズでは、主人公がちゃんと歳をとっていき、それに従った環境の変化があり、周りの人間関係についてもそれなりの歴史があり、マンネリというよりも、良い意味での熟成感になっているように思われます。本作では前三作を読んでおられる方にはお馴染みの彼女が再登場したかと思ったら、既にどっぷりと恋人になっています。
でも本作では、友人のオカマが殺された件に関する謎解きがテーマとなっています。この謎解きに関しては、ちょっとこれはどうだろう?というのが正直な感想でしたが、そこに至るまでの過程は、主人公の捨てきれない青臭さ・正義感(といって良いのか多少疑問がありますが)が描かれつつ、お約束のハードボイルド的な味わいも十分で、存分に楽しませてもらえるものでした。
私の場合には少し前に「榊原健三」シリーズをつまみ食い的に読んでしまい主人公の遠い将来を少し覗き見してしまった形になってしまったため、作品最後の彼女の台詞については少し複雑な思いをしましたが、それでも主人公に人並みの幸せが来そうな一言で、中々憎いラストと言えると思います。
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