ルッジェーロ・リッチが亡くなった。8月6日のことだ。 パガニーニの24のカプリース全曲を無伴奏で初録音し、稀代のテクニシャンとして名を馳せた名手だった。 かのハイフェッツに比べると、幾分音程に安定さを欠き、ヴィブラートの独特さが鼻につく人もいたようだが、それはそれでリッチ節として楽しめる人には楽しめた。
この若かりし頃の録音は、師のルイス・パーシンガーを伴奏者に迎えての名演奏である。 サラサーテの舞曲集を集めた本録音は、リッチの抜群の弓捌きがめっぽう面白い。 ハイフェッツほど合理性に徹した演奏ではないのだが、その表現の雄弁性は、今聴いてもまったく色あせない。 パーシンガーの伴奏も、単調なようでいて、ともすると暴走しそうなリッチの危うさをきっちりフォローしている。
娘が小学校入学を控えたとき、まてよ、ウチにはボサノヴァやジャズや沖縄音楽ばっかりあって、いわゆる「名曲」をきかせてなかったなあ、と探したのがこれです。
5枚も6枚もある大全集となると、子供も混乱しますが、2枚組のボリュームはおこちゃまにはちょうどよく、また内容も小学校の音楽の時間に習うようなものばかりで十分です。
録音年代が古いものもありますが、合格点でしょう。
パッケージングもかわいく、子供も勝手に聞いています。
細くかすれ気味な音はそれほど美しくはないし、技巧は正確無比ではない。 音程も良くない。 しかし、限界を超えたすさまじいスピード、破綻を恐れぬ恐ろしい弓さばきは誰も真似はできないだろう。 機関銃のような5番のスタッカート、おどろおどろしい6番のトレモロ、24番の左手のピチカートで驚くのは繰り返しのエコーをピアニシモではじいている! 悪魔のようなヴァイオリンである。
まさにそんな感じだ。 リッチはイタリア系のアメリカ人で、技巧派として知られている。 ラテン系という事もあってか、リッチの演奏は情緒たっぷりである。 そして、このCDに収められている2曲、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲と、ラロのスペイン交響曲は、そんな演奏がまさにぴったりとくるのである。 ラロのスペイン交響曲は、この曲を初演したサラサーテが第3楽章を省いて演奏した為、現在でも第3楽章が省かれる事も多いが、このCDでは全楽章が収録されている。そういった事でもお勧めである。 第3楽章はスペイン風な情熱的な曲で聴いている者を魅了する名曲だと思う。
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