海洋冒険活劇の定番を押さえたストーリー展開が
心地良い作品であります。
これこそ「定番」の力を示す作品であると
いえるでしょう。
フリードキン、コッポラ、ボグダノヴィッチ…かつては次代を担うと崇められ大いなる期待を抱かせた三大監督であった。彼らは実際「ディレクターズ・カンパニー」を旗揚げし期待すべき作品を作るはず…だった。ところが彼ら自身の趣味に走ったせいか、大した作品を生み出せずつぶれてポシャってしまった。 「フレコネ」「エクソシスト」という今見ても色褪せない影響力の持つ傑作を作り出した後、どの作品も冴えないものばかりでがっかりさせられたものだ。それらがあまりにも強力だったので彼自身超えるのも難しかったのだろう。収穫といえば「クルージング」「LA大捜査線」ぐらいでその後も作品数も減りもう終わったかと思われた。 ところが2000年「英雄の条件」で見事に大復活してくれた!観る前はさして期待してなかったが、題材のよさやトミー・リーの名演と何よりもフリードキンの持ち味が全てプラスに出てた会心作だったと思う。 そしてこの作品もとてもいい。トミー・リーはここでも大変いい味を出してるし共演者たちもいい。ここでもフリードキンの持つ良さが全てプラスに昇華されていて、悪夢のシークエンスや切れのいい誤魔化しのないアクションシーン、透徹したリアリズム等やはり月並みな監督では生み出せないのではないか。アクション映画だが、素手対素手の体を使った男同士の対決、拳銃や車だけでなく手作りの武器や技での勝負など類型的・月並みなものに堕してない。トミー・リーとデル・トロとの絆をもう少し掘り下げても良かったよう思うが、大きな作品の傷とはならないと思う。
ジョン・ロートンは、イギリス人であるが、そのキャリアをドイツのハード・ロック・バンド:ルシファーズ・フレンドのシンガーとしてスタートしている。LUCIFER'S FRIENDは、ジャズ/プログレッシヴの要素も持った実験的なハード・ロック・バンドで、知名度は高くないが、英米以外ではまだ珍しかった本格派のバンドで、その筋のファンにはよく知られていた。特にヴォーカルのJohn Lawtonの目の覚めるような美しい高音は、ロック30年の歴史を経ても色褪せることのない素晴らしいものであった。LUCIFER'S FRIENDの代表曲は「Ride The Sky」という曲で、若干ツェッペリンの「移民の歌」を思わせるコーラスでスタートするスピード・ナンバーである。 しばらくドイツで活動を続けるが、後にその実力を買われ、デイヴィッド・バイロンが去った英バンド:URIAH HEEPに2代目シンガーとして迎えられる。しかしバンドがやや下降線だったこともあり、アルバム3枚を残し脱退。一時ドイツに舞い戻って1981年のLUCIFER'S FRIEND 再結成にも加わっている。 この後、ロートンは再びドイツに舞い戻り、2つのバンドでシンガーを務めた。1つが REBEL(リベル)、もう1つが ZAR(ツァー)である。この2枚のアルバムを1枚にまとめたのが本CDで、格好いいハード・ロック・ナンバーが満載だ。特に、ZAR のファースト・アルバム「LIVE YOUR LIFE FOREVER」の完成度は素晴らしく、良い曲が多い。ロートンの天高くどこまでも伸びて行く高音には心が洗われるようだ。メタル系寄りのバンドのレヴューじゃないみたいだが、ロートンの美声には確かにそんな響きがあるのだ。美しいが、決して弱々しい声ではなく、完全透明だが適度にパワーも兼ね備えている。ちょっと滅多に居ない声で、聞いて損はないと思う。 その美声に惚れ込んで、元DEEP PURPLE/RAINBOW のリッチー・ブラックモアが真剣に自分のバンドに誘ったほどだ。普通人であるロートンが、リッチーの奇行を嫌ったようだが、もしかしたらRAINBOWの歴代シンガーの中に名を連ねていたかも知れない人なのだ。ハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ファンならば是非聴いてもらいたい一枚である。
|