本書は私立探偵笹野里子が遭遇する四つの事件を描いた連作ハードボイルドミステリである。であるからして、ここに登場する笹野里子はタフな女なのである。不可解な死を遂げた夫の後を継いで私立探偵になった彼女は汚い世界にも加担に立ち向かい時には荒っぽいことも辞さず、解決しても気の滅入るような事件をこなし、いまではいっぱしの探偵になっている。
そんな彼女が直面する四つの事件は実業家の孫娘が陥った暗くて救いのない話にはじまり、売り出し中の女優の素行調査で浮かび上がる不快な因縁や、凄惨で残忍な殺人をめぐるハードな事件、夫の死の真相が浮かび上がる醜悪な事件と、どれをとっても陰惨な印象を受ける事件ばかりだった。ミステリとしてのサプライズは薄いかわりに、里子の起こす行動の衝撃と事件の陰惨さで妙に心に残る奇妙な本である。
一編の長さは60ページ程。だから展開は非常にはやい。性急すぎていささか呆気ない。事件の解決に至る過程が短いゆえに、入り組んだプロットの妙味は味わえない。どちらかというと、配役の決まった安易な二時間サスペンスをみている感覚に似ている。
だが、本来ならそれだけでミステリ作品の価値が無くなるに等しいのにも関わらず、本書は一読忘れがたい印象を残す。それは先にも書いたように、ひとえに主人公である笹野里子の行動原理によるところが大きい。彼女はそんなことしないだろうなとタカをくくってる読者の横っ面を張りとばす行動をとるのである。それは抑鬱から解放されたかのような行動であり、およそ人間的でも現実的でもないのだが、それが成立してみえるのは作者の手腕によるところが大きいだろう。
乗る電車をうっかり間違えてたどり着いた町で暮らす画家のぼくと、住人たちが織りなす七つのお話。 こましゃくれた口ぶりがおかしい小学生のチサノや、夢見る哲学者のような英語教師のノートンなどなど、 登場人物が大変ユーモラス。チサノのうちの猫ミーコや、ご近所のおたまさんの飼い犬だったシロ、 梅雨入り、明けを教えてくれる雨坊主など、人ではないものたちの描写も、非常に愛嬌があって微笑ましいです。 夢と現が交錯するようなちょっぴり不思議なことも起こります。 単行本のレビューにもありましたが、梨木香歩さんの『家守綺譚』とどこか似た空気のある作品です。 一話一話ほのぼのしていて味わい深いのですが、最終話の数ページを読んだとき、 生きていくことの理のようなものがやさしく立ち上ってきたような…… 癒される、心が温まるというだけではない、深い感動が心に広がって、泣きたいような気持ちになりました。
八王子の郊外のミミズクが遊びにくる一軒家で主人公と奥さんは 暮らしています。 主人公は作家で、奥さんは和服のお仕立てをしたりしているので、 出歩いたりすることなんかはほとんどなく、二人は一日の大半を 家の中で過ごしています。 そんな二人の生活のリズムを刻んでいるのは、奥さんの作る美味 しそうなお料理です。 登場してくるお料理は四国では定番のもののようですが、私にと っては、初耳のものばかりで、そのぶんますます美味しそうに感 じられてきます。 お料理上手で聡明で控えめな奥さん。男の方からみたら理想の奥 さんかも知れないですね。そんな奥さんのもとには、主人公の友 人達がお料理と謎解きを求めて集ってきます。 ミステリーとしては、?という部分といち部もありますが、二 人のまるで漱石の世界を思わせるような暮らしぶりと美味しそう なお料理には一読の価値があります。 因みに、私は、この本を読んで鰹節派からイリコだし派に改宗し てしまいました。
告白の内容はさまざま。恋愛・友情・感謝・・・
大人になるほど告白することは少なくなります。告白するって気恥ずかしさを伴うものだからでしょうか。
だから、どの告白も、その緊張感が新鮮でもあり懐かしくもあり、面白かったです。
あっという間に読み進んでしまう1冊です。何かを告白しようか迷っているあなた、必読ですヨ
確かにそれぞれ夏休みを題材にした作品だが、とりわけ夏休みを感じられるような作品と言うわけではなかった。
ただ、個々の作品はどれも素晴らしい。
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