戦前の日本を舞台に開かれた本州縦断自転車ロードレース。その白熱の行方を描いた作品である。’04年、「このミステリーがすごい!」国内編第5位に堂々ランクインしている。
戦争の足音が忍び寄る昭和9年、ある男がとんでもないレースを計画し実行に移した。山口県下関から青森県の三厩(みんまや)まで、本州を自転車で縦断するという<大日本サイクルレース>である。しかもレース用ではなく、泥よけや荷台がついた重たい商業用自転車を使用するというのだ。しかし人気は上々、海外からの参加も含めて、決して安くない参加費を工面して、高額賞金目当てに、大人数が参加する。それを取材する側もフランス人などがいて国際的だ。
山師的な主催者の狙いや、レースの裏にちらつく軍部の影、アマチュア化に逆行する大会に反対し、妨害を画策するブルジョア競技団体の動き、さらに、謎めいた参加者たちの真意など、さまざまな思惑がレースの背後で複雑に絡み合い、ただでさえ過酷なレースはより厳しいものになっていく・・・。
はじめは個人参加だった響木は、越前屋、望月、小松という、一癖も二癖もありそうな者たちに声をかけ、寄せ集めのにわかチームを結成してレースに挑むのだが、彼らの運命は・・・。
本書は、昭和不況の後遺症にあえぎ、戦争の泥沼にはまり込んでゆく時代を活写しながら、同時に自転車レースの魅力をたっぷりと描いた、冒険小説の傑作である。
いわくありげなメンバーが集まって開催された自転車レース。
ロードレースの運営と戦略、選手たちの悲喜こもごものやり取りだけでなく、
大会の背景にあるアマチュア原理主義の怖さや、
戦争直前の息苦しく緊迫した世相も描写された快作です。
5つ星に値する作品だと思います!
この本に出会えてよかったと思う。
オートバイという乗り物を通じていかに自分を知るかという
とても興味深いないようでした。
私たちが普段オートバイに乗っていて感じる言葉に表さない
何かが綴られています。
読後、著者の言うようにオートバイに知的に乗れる自分を発見し
驚くとともに、より豊かなオートバイライフが歩めるようになりました。
動物(狐)が主人公の時代物であります。 巣立ったばかりの若い狐が、人里近くに住み始めました。危険だと解っていながら、人間への興味を抱いた狐は、真面目に人間観察を始めます。人間は言葉という物を喋るということに気付き、それを覚えます。人間の喋ることから、色々なことを知ります。 そして『狐は化ける』ということを耳にします。 はて、そんなことがあるものか……。若い狐はその疑問を究明するために、仙人のいるという白駒山をめざしました。 何か疑問を持つと、よく見、よく聞き、深く深く考える。何かを知りたい、身に付けたいと思うと、実にこつこつ真面目に努力する。若いのに礼儀正しく、目上の者に対して控え目。親しくなった人間のためには一生懸命役に立とうとするし、敵であっち!も無闇に憎まない。 狐君はとっても佳い若者です。 その曇りのない素直な狐の目で見る人間達の姿は、彼にとって、とても不可解です。それでも彼が人間に関ろうとする訳は、どうやら彼にも解らないようです。 この物語は1作目で、2作、3作~と続きます。仙人様から白狐魔丸の名をもらって立派な化け狐になった彼が、人間世界を静かに見つめ続けるこのシリーズ。彼が、人間の歴史をどう感じとるのか、人間としては、無性に気になってしまうのです。
このシリーズ、ぺと子の関西弁と屈託の無い性格の魅力が、全編を貫きます。
そして、多様な属性の種族と、普通の人間とが、大きな軋轢もなく共存している平和性が、非常に良いです。
実社会には、排除の論理が、大きな壁になる場合もあります。
それが、徐々にではあるものの、特に、若い世代程、壁は小さくなりつつあります。
こんな事を、連想させられました。
シリーズ全体は、「共存」という点では、非常に未来志向です。
作品全体が、一定のメッセージを発しているかの様です。
それぞれのキャラクターは、意表を突かれる、個性に溢れています。
そして、何より、大変美しいラストシーン。
美しい映像と、のどかな雰囲気。
浸れます。
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