01.東日本大震災
02.福島原発の事故
03.放射線の影響
このシリーズも5冊目ですね。
臨時特別号と銘打ってるように
3.11の東日本大震災に絡む話題です。
地震や津波が起こるメカニズム、
福島原発で何が起きたのか、
心配される放射線の話題の
3つを柱に解説されております。
内容的にはテレビ番組のものと
ほぼ同じもの。
見逃してしまった人、おさらいしたい人
向けの本です。
特に放射線については、
直接地震の被害を受けてない人も気になる
ところでしょう。
我々が口にする食物等が気になりますよね?
しかし、ほとんどがそれほど気にする
必要のないもので、いたずらに
恐れるのは風評被害を生み出す元ですので
きちんとした基礎的な知識は持って
おいたほうがいいでしょう。
−−国や東京電力が事態の収束を目指して、懸命な努力を続けていたことはわかる。しかし、放水作業にせよ、汚染水処理にせよ、スムーズに事が運んだことはほとんどない。迷走し、つまずきながら、どうにか対処している状態だ。にもかかわらず、計画通り事が運んだ場合や、万事うまくいった場合のことしか示さない。計画通りいかない場合はあるのか、その場合どんなリスクが考えられるか、そのリスク対応はどうするつもりなのかなど、うまくいかないときのシナリオについては口を濁すのである。放射性物質がどれだけ拡散するかに関しても楽観的な見解しか示そうとしない。こうした政府・東京電力の姿勢は国際的にも批判の対象となっている。・・・(中略)・・・・ 彼らが事故をひたすら矮小化しようとするのは、社会が混乱するのを恐れているからだと思う。しかし、それは彼らがあまりにも災害心理学における“常識”を知らずに下した稚拙な判断だと思わざるを得ない。なぜなら、大きな災害に遭遇した大衆がパニックを起こして、社会的混乱をきたすことなど、ほとんどあり得ないというのが専門家の間では常識だからである。事実を知らせると国民がパニックになる。だから事実を隠しておこうというのは、あまりにも国民を愚弄した話だ。世間には、地震や火事などに巻き込まれた人々は、その多くがパニックに陥りお互いに先を争って逃げようと行動するため、ますますひどい状態につながってしまうという見方が多い。しかしこれは大きな誤解であり、ほとんどの場合、惨事に巻き込まれた人々は、異常行動としてのパニックを起こすことはない。識者の間では、この災害とパニックを安易に結びつける世間の常識を揶揄して「パニック神話」と呼ぶ。このパニック神話を信じたために、大きな惨事を引き起こした例もある。1977年5月、アメリカ・シンシナティで発生したビバリーヒルズ・サパークラブで発生した大火災がそれである。アメリカ火災史上でも二番目という多くの犠牲者を出したこの事故は、客がパニックになることを恐れた従業員が発した「ボヤですから心配いりません」という言葉がもたらしたといってもいいだろう。実際よりも過少に伝えられた火事の状況に安心した客たちが、避難するタイミングを逸し、逃げ遅れてしまったのである。こうした過去の例を見ても、この時点で事実を矮小化しようとした政府の対応がいかに誤った判断にもとずいていたかということがうかがえる。−−(本書53〜56ページより)
本書の著者広瀬弘忠氏は、1942年生まれで、東京大学心理学科を卒業した後、東京女子大学の教授と成った災害心理学の専門家である。本書は、その広瀬氏が、その災害心理学の専門家の立場から、今回の東日本大震災とそれに続いて起きた福島第一原発の事故を分析した極めて価値の有る一書である。上に引用した「パニック神話」への批判もそうであるが、災害心理学の立場から見て、これまでの日本の原子力行政にいかなる問題点が有ったか、そして、今回の原発事故における政府・東京電力の行動にいかなる問題が有ったかを理由と共に指摘し、何を学ぶべきかを論じた建設的な本である。
考えさせられた箇所は多々有るが、特に、非常時における「正常性バイアス」の問題には深く考えさせられた。今回の原発事故における「社会的手抜き」について、著者の考察が無い事だけは残念に思ったが、これは、私の愚見に過ぎないだろう。つくずく思ふ事は、日本政府も東京電力も、戦争中の政府・軍と同様の稚拙さから全く進歩して居ないと言ふ事である。その事の恐ろしさを感じずには居られないのは、私だけだろうか?本書が、一人でも多くの人に読まれる事を切望する。
(西岡昌紀・内科医/東日本大震災から半年目の日に)
ちょっと記憶から古くなってきた東日本大震災。最近では、地震や津波の被害よりも原発被害、放射能被害だけが震災の置き土産の様な気配さえしてきている。でも、実際には東日本各所には被災者がいるんだと。忘れてはいけないのだと。きっと宮城県のお医者さんたちのがんばりは、宮城県だけのものではなくて、岩手県でも福島県でも茨城県でも千葉県でも、同じような先生たちが同じようにがんばったのだろうと感じました。おわりににありましたが、「この経験を次の災害医療に役立てて」って本当にそう思いました。読みべき一冊でしょう。
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