本書はアラブ世界の視点で十字軍の侵攻から後の反攻、 さらにサラディンという歴史的英雄の登場を活写しているわけだが、 これらの推移をふまえつつ現代アラブ世界と欧米諸国の 対立が抱える問題にまで挑戦的に言及しているのは興味深い。 高校の世界史の教科書では、ほんの数ページ、 それもヨーロッパ側の見方でしかない内容だった十字軍史が、 アラブ側から見ることにより、より多面的に、立体的に 当時の人々が何を考えていたのかがよくわかる。 もともとハードカバーで売られていたものだけに、ページ数と値段は結構なボリュームだが、 手に入れる事も至難だった時期を考えれば非常にありがたい。 しかも単なる歴史の羅列を記したものではなく、物語としての表現も軽妙かつ秀逸なので ちょっと普通の歴史小説は飽きた……という人は大いにのめり込むだろう。 大学で史学を専攻したいと思っている高校生にぜひ薦めたい作品だ。 ちなみに本書は知る人ぞ知る有名なファンタジー小説、 「アルスラーン戦記」の参考資料にも使われており、 ファンなら登場する固有名詞にニヤリとする事も多々ある。
シュメール時代から古バビロアニア時代までのメソポタミア文明を扱った入門書である。ある意味、非の付け所がない。特に、古バビロニア時代については、ハンムラビ法典を中心に具体的に説明されているため分かりやすい。
But、第1章「古代メソポタミア」は、同じく岩波書店『古代オリエント事典』の「総論III−3−(2)メソポタミア」を、です・ます調で書き直しただけである。
2003年のイラク戦争を取材した際の記録です。相変わらずの軽いノリながら、開戦と同時にバグダッドにはいり、米軍による制圧から脱出までを描いています。
前回読んだ「サマワの・・」に比べると、格段に高い戦争取材の緊張感が伝わってきます。個人的にはアフガニスタンでの記録「ワシは舞い・・」に匹敵する作品だと思います。
これから読まれる人のために一言:下巻の最初にある地図は、上巻の半ば、バグダッドにはいってからは有用です。
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