凍てつく東北の山に暮らすマタギ、富治。富治の半生をマタギという狩人としての暮らし、圧倒的な自然の中で壮大に描いた力作巨編。読み始めるやストーリーにぐいぐい引き込まれ、一気に読了した。読書の悦びをストレートに再認識させる本だ。文句なく★5つ。
まったく読んだことのなかった分野の本。 読み終えた後の感動は、これまで味わったことのないくらいのものだった。 明治、大正の東北の村を舞台にした、山の神を信じ、ひたすら熊を追い続けるマタギの男たちの物語。 マタギの世界。最初は、マタギって何?っていうくらい、全く無知の世界だった。 それが、どんどんどんどん引き込まれる。 物語の最初から、全く無知の世界であるはずなのに、すぐそばで見ているかのような、ほんとに臨場感溢れる!狩りの様子が描かれている。 そして物語は、主人公の波乱に富んだ人生を中心に展開する。 14歳で、父や兄、他の村人と同じようにマタギとなった主人公・富治。それはそれは厳しい「山の掟」を守りながら、熊やニホンカモシカを追い、生活する。 マタギは、ただの生活の糧として獣を狩るのではなく、大自然や獣に敬意を払い、生活する。 とにかく、ストーリーの壮大さに圧巻、圧巻。 男たちのかっこいい生きざま。 なんだか、読み終えるのがもったいなかった。
いつもきまった作家の作品ばかり手にとってしまう。たまには新しい作家にも目を向けないとと思い、大好きな山本周五郎賞を受賞した作品ということで、手に取った。 同賞を受賞した作品のすべてを読んだわけではないが、 久々に読み応えある作品にめぐり合えた、という満足感がのこる。 ストーリー展開やモチーフの面白さはもちろん秀逸。 しかし、それだけにとどまらない、あくまでも人間に焦点をあてた物語展開、どんどん主人公の生き方にひきこまれていく。山本賞にふさわしい作品だと心から納得。
これほどまでにマタギの人々の信頼を勝ち得たカメラマンは、かつてひとりもいないのではないか。
ライター家業のひとりとして、十数年にわたって、ひとつのテーマを、これほど深く追求した作品を残すことができた田中氏に、軽く嫉妬を覚えたくらいだ。
短編が7つで虹のように一つの物語になって行くという構成.第一話だけでも独立できるような仕上がりである.随所に現れる二輪の記述は長く乗ったライダーならではの記述だと思うが,片岡義男が単なるオートバイの小説で終わっているのに対し,こちらは人生を語っている.
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