知人に勧められて読み始めましたが,とにかくおもしろい。
内容には賛否両論あるかもしれませんが,主人公の苦悩は胸にジーンとくるものがあります。
一部の医学的な内容は,詳細なんだろうとは思いますが,私の理解力を超えていました。
ただ,そういう部分を読み飛ばしても,心に残る作品でした。
輸血をしてまでも救おうとした少女、お初を死なせた仁と咲。失意の中で江戸に戻るが、シーボルトの娘、イネという産婦人科医と出会う。
そのイネが行うことになったお産が難産で、仁が慣れない帝王切開で母子の命を救う。
そして、仁は長崎に呼ばれる...
またまた、江戸時代の歴史上の人物が登場。イネのほかにも長崎でグラバーの眼の手術を行う。本当によくできたストーリーだと思う。次はどんな展開だろう、楽しみだ。
別の人も言ってるけれど、忙しいはずなのに、これだけしっかり資料を調べていて、明治の世界を描いたことがすごい。歌舞伎役者は今でこそ伝統芸能で高嶺の花のような扱いだが、明治までは低俗な民俗芸能的な扱いだったのだな、と思った。北野監督の映画でもでてきたが、女形も少年も、男に売春をしていた時代。歌舞伎役者は当時は色子として、美男子が影でパトロンに色を売って成り立っていて、そんな卑猥な世界を当たり前に目にして育った主人公は、実は天皇の血筋の母と歌舞伎役者の父の間に生まれた子。いわば、天皇の汚点。高貴な血と底辺を這い回る歌舞伎役者の血との葛藤に苦しむ。さらに当時天皇といったら神なので、こんなことはあってはならず、尻拭い的に明治政府に命を狙われていた。男性性と女性性の間をどっちも行き来する歌舞伎役者の性が描かれていて、今の常識との違いにかなり抵抗感があったが、当時はこれが本当なんだろうと思う。漫画の表現では表現しきれないくらい内容が濃いので、漫画じゃなくて、実写にしたら、もっとすごいかもしれないと思った。(漫画は見たくないシーンをちょっと激しく描きすぎかも。)
クライマーの事は素人でわかりませんでしたが、この本に出会う事により、自分が登っているような、どきどきした感情・世界が堪能できて非常におもしろかったです。
ストーリー・テリングの妙で一気に読ませる第18巻。本当に結末はこのままなのであろうか?
それにしても、作者の登場人物に対する眼差しの暖かさが素晴らしい。人生は一回きり。この時代、精一杯生きる人達の姿を描いて秀逸である。
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