かねてより名のみ知る存在だったが、キンドル導入のテストとして読んでみた。
半七親分が明治以降も生きていたなんて、知りませんでしたねえ。
テレビの時代劇ドラマ的イメージしかなかったんですが、予想以上にミステリー小説でした。
続きも読みはじめてます。
楽しみがひとつ増えたな。
文章も平易で、あっさりした印象でありながら、何度読み返しても味わい深く、その江戸情緒が郷愁を呼ぶ。 昔、小林信彦さんがフォード監督の「リバテイバランスを撃った男」の映画評で「額縁に入った昔の絵」という表現を使われていたが、この作品もまさにそうである。半七老人が語る事件は彼の若き日の回想であり、それを聞いた当時駆け出しの新聞記者であった筆者が、往時の老人との交友を懐かしく回顧しながら記すという二重構造が郷愁を呼ぶ仕組だろう。 このシリーズを読んだ後に読むと、あの「鬼平犯科帖」なども、ひどくあざとい物語に感じられてしまう。 第一作の「お文の魂」で記される「半七はだれに対しても親切な男であった」という主人公のさわやかな印象がシリーズ全編を通じて感じられ、それも心地良い。
仮名遣いを新かなに改めなかったのは大英断。 やはり雰囲気が出ます。 綺堂に限らず、新かなを嫌った谷崎、断じて認めなかった百'閧などは、もとの形のままで出して上げるのが筋なのでは? 二三頁も読めばすぐ慣れるのに、しかもいろいろ不都合な箇所も出て来るのに、なぜわざわざ新かなに改めるのか合点がいきません。
1986年に出たものの新装版。字が大きくなっている。
「雪達磨」「熊の死骸」「あま酒売」「張子の虎」「海坊主」「旅絵師」「雷獣と蛇」「半七先生」「冬の金魚」「松茸」「人形使い」「少年少女の死」「異人の首」「一つ目小僧」の14篇が収められている。
味わいが素晴らしい。淡々とした語り口、怪異なエピソード、生き生きとした江戸風俗、意外な謎解き。いずれも高水準であり、自信を持ってお勧めできる一冊だ。
捕物帳の最高峰だろう。
1988年に光文社文庫として出たものの新装版。文字が大きくなっている。 『影を踏まれた女』の続編に位置づけられる怪談集。 『近代異妖篇』(大正15年)から8篇、『異妖新編』(昭和8年)から5篇の、合計13篇が収められている。 語り口の巧みさは抜群である。淡々とした口調なのに、いのまにか怖くなってしまう。また、あからさまに恐怖を描くのではなく、投げ出したような素っ気なさで怪異・不思議が語られている点が魅力的。結末に至っても、解明や謎解きがされないのも素晴らしい。不安や恐怖がじんわりと漂ってくるようだ。 タイトルとなっている「白髪鬼」が傑作。ぞっとすること請け合い。
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