「男はつらいよ」は1980年代は、観客動員数もやや減少、マンネリ化した感もありますが、その中にあって「知床旅情」は「口笛を吹く寅次郎」と並んでこの時期の秀作だと思います。(偶然ですが、マドンナはともに竹下景子さんです)
三船敏郎が不器用だが愛情に溢れた老獣医師を好演。まさに黒澤映画で三船さんが演じていた主人公たちが、年を取ったらこんな感じになったのでは? と思わせる存在感です。 これに対し、その昔、三船さんと「野良犬」で共演した淡路恵子さんが堂々の第二のマドンナ役。三船さんを相手に回して一歩も引けを取らない演技を見せます。(この他にも黒澤作品へのオマージュ的な部分がいくつか見られます)
一方、離農していく農家も描かれています。山田洋次監督はかつて「家族」(1970年代)で長崎から北海道へ開拓民として移民する家族を描いており、近代化と産業化の中で揺れ動く家族の姿を描いています。山田監督は「知床慕情」でもまた、このテーマを追跡し描いています。 (このあたりはテレビドラマ「北の国から」と並行してみると尚興味深くなると思います)
北海道・知床の美しい自然を背景に、重厚かつ爽快な作品を堪能できる、寅さんシリーズ屈指の一作とお思います。
はじめの床屋のシーンから、すでにただならない雰囲気がありました。そして岡田英次さん演じる科学者(かっこいいんだこれが、、また奥様の役に八千草薫さん、決まりすぎてます、この夫婦)の会議場での話。
オープニングは勝利したようなものです。
自衛隊ではなく国防省のメンバーに高橋悦史さん、沖雅也さん、勝野洋さん、もうすんなり入ってこれるキャスティング。
マスコミのストーリーテラーとして仲代達矢さん(NY,パリのロケお疲れ様でした、という内容ですね)という感じで話が進んでいきます。
「血液型:青」これがどんなに迫害されるのか?
すなわち人類の差別の歴史の基本と、集団の防衛本能についてのサスペンスであり、人間が人間であること自体に内在する恐怖というか、排他的動物としての予定調和が必要な生き物としての宿命みたいなものに根づく恐怖です。
私はよくわからないのですが、もしかしたら「ロボトミー」などの表現があるので普通にはテレビで上映されにくいタイプの映画かもしれません。
特典の岡本監督の話ででてくるのですが、脚本家の倉本聰さんが脚本どおりに映画化しなければいけないという条件を出したあたり、下手なアクション映画にして欲しくないという意思の表れなのかもしれません。また監督も上手く料理していると思います。ちなみに特典のインタビューはオーディオコメンタリーではなく回想的に数分間、簡単に述べているだけで、音声のみで監督のお顔は拝見できませんでした。
あと追記的事項ですが
竹下景子さん、私の感想では、若いときの一番良い顔がこの映画のなかにあるような気がします。
最後のシーンの後、このSF?ではどんな世の中が展開するのか?と考えると面白いと思います。
私見では、「今と変わらない世界」もしくは「資本主義、お金が優先する世界、または暴力が優先する世界」でしょうか。隠れたところに支配者がいますね。きっと。この私見は置いておいて、この映画のようにヒューマニズムを否定するような映画も、構成する人間個々は喜怒哀楽があるのでしょうけどねえ。
観ていると次どうなるのか、渇望が生じてくる脚本であり、映画だと思いました。個人的にはすごく気に入りました。
先日、富良野で「北の国から」の舞台を旅し、もう一度最初から見直してみようと思って購入した。 最初、田中邦衛がまだ若く、中嶋朋子・吉岡秀隆がほんの子供でタイムトリップした感じになるけれど、すぐストーリーに入り込め、違和感を覚えなかった。しかし、中嶋朋子・吉岡秀隆の子役としての天才ぶりには改めて脱帽。純・吉岡秀隆と父・田中邦衛のぎこちないやり取りにきゅんとなった。 ちょっと元気のなくなったときに、“一生懸命生きている”ってことだけで素晴らしいんだ!って思えるような本当に素敵な話です。
一回目は、主人公の生い立ちや、隣に住む少女とのほのかな恋心、友情、その地の美しい自然、のどかさ、主人公の父の生き様、強さ!など平和で何事もなく過ぎていくかと思える、そのとある藩に 主人公や周りの人々まで巻き込でしまう事件が・・・・。 主人公とその父とのの、多くの言葉では語らぬが通じ合う心、父としての教え。 何かを考えさせてくれるような、物語です。
このあと10年間に3本つくられる竹下景子3部作(?)の最初の作品。『旅と女〜』『夜霧にむせぶ〜』というシリーズ中の最低作に挟まれそびえ立つ金字塔。個人的な好みをいえば全シリーズ中でこの『口笛〜』が最高傑作だとおもう。というか一番愛している。一作だけ残せといわれたら、迷うだろうが、これを残すことになるだろう。松村達雄、中井貴一、レオナルド熊と助演陣もすばらしい。杉田かおるもいいが、最近のメディアでの暴走、迷走ぶりは許せない。裏切り行為である。
|