マリー&ガリー Ver.2.0 [DVD]
2.0になってギャグ要素が増え、アニメとしての面白さは増量されています。ただ、それに頼って話を構成している印象があり、教育的要素は後退しています。また、ノリカ中心で進む話が多くマリカはサブキャラに後退したかのようです。ショートアニメとしての出来は相変わらず高水準ですので、タイトルと内容のずれに違和感を感じなければ問題ナシです。
最後に画質・音質について。音質はリニアPCMのため声も含め音に芯があり結構よいです。一方画質は第1期も同じですが、輪郭線のジャギーが常時出ておりそれにプリシュートが加わって見づらいです。PC画面程度のサイズでの見栄えを念頭に調整したと思われ、個人差がありますが40型以上の画面サイズでは全編の視聴はきついかもしれません。放送では前記症状は見られませんので、いつかBD化を期待したいところです。
一週間
ユーモアで歴史に挑戦してきた作家井上ひさしが、最晩年に挑んだのは、日本兵のシベリア抑留を扱った本作『一週間』である。アメリカ占領下の日本を舞台にした『東京セブンローズ』がそうであったように、過去に実在した事件や事象を物語にしているだけに、綿密な取材と歴史公証がなされており、物語上のフィクショナルな仕掛けをのぞいて、戦時下の共産党員の地下活動や日本兵のシベリア抑留生活がリアルに描かれている。
この物語が多層的で屈折した内容を抱えているのは、共産主義の活動家が共産主義の手本であるはずのソビエト連邦に不法に抑留され、さらには戦時法にあるまじき不当な扱いを受けているという屈折が何よりも大きい。あこがれの国の内実が明らかになるほどに、主人公は共産主義の元締めに幻滅するのだが、同時に解体されたはずの日本軍の階級制度に苦しめられることも屈折になっている。前にソビエトがあり、後ろに軍隊時代の階級制度がある。
物語を大きく動かすのは、レーニンが革命家として駆け出しの時代に友人に送ったという一通の手紙である。そこには自らの少数民族の出自と、差別のない平等世界への理想が記してあった。これは社会主義を独裁の手段として利用するソビエト連邦には、都合の悪い文章であり、なかでもレーニンの出自が明らかになれば、民族差別さえも利用して統一している連邦国家が空中分解しかねないおそれがあった。スターリンとその一派はこの回収に血眼になるはずである。
そのレーニンの手紙を入手した主人公が、抑留するロシア人に対して逆襲をはかるところが本書のいちばんの面白さである。主人公は「裏切られた革命」に復讐し、さらには不法に日本人を抑留するソビエト国家に逆襲しているのである。恨みの動機によって突き動かされていた主人公が、クライマックス直前で回心し、自分に関係した人たちを日本に連れ戻そうと決意するところに心打たれる。恨みに捕らわれていると、自分までも「シベリア抑留」を指揮するソビエト連邦のような独善的なマキャベリストになってしまう、というのがその発心のようである。
結末はあまりにもあっけない。あっけないからこそ、歴史としての事実の重みが残る。
ゾルゲ事件などの戦時下の共産党活動家の抑圧。ラスト・エンペラー溥儀を利用した満州国建国のいきさつ。第二次大戦終結直前の平和条約を破ったソ連の満州侵攻。などなど、歴史的な事実を知らないと、本書だけでこの時代の空気感を掴むことは難しい。
本作品を読んで一番最初に連想したのは、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』(こちらはヒトラーの出自をめぐる秘密文書がカギ)である。 シベリアの抑留生活については五味川純平の『人間の条件』を連想した。日本では軍国主義に抵抗し、シベリアではソ連の権威主義に抵抗するのが、そっくりだからである。溥儀とすれ違うシーンでは、ベルトルッチの映画『ラスト・エンペラー』の一場面を思い出した。
これらの作品の雰囲気をすでに知っていた私には、本作『一週間』はとてつもなくスペクタクルな作品であり、かつミステリーとしても一級で、しかも歴史を安易に覆さないリアルな物語だったと感じた。なお主人公のモデルは詩人・石原吉郎ではないかという説が囁かれている。リンチを受けて凍死した同僚は、経済学者の隅谷三喜男ではないかと言われている(主人公が隅谷だという説もある)。隅谷三喜男は満州で五味川純平の同僚で、二人とも同じような体験のもとでシベリアに抑留された経験を持つ。
その意味で五味川純平の満州をめぐる作品について読んでおくと、『一週間』の世界がより深く理解できるだろう。
敦煌 特別版 [DVD]
原作は好きでしたが、公開当初は「角川映画かぁ…」とウンザリ。
たまたま招待券をもらわなければ、行く事はなかったでしょう。
その後、自腹で3回観ました。かなりお金のない時代でした…。
ストーリーについていえば、原作を吹きすさんでいた乾いた風が、
すっかり湿気てしまっていました。ベタベタです。
しかし、もうそんなことはどうでもいいのです。
これは、騎馬戦闘を観る映画です。すごいとしか言い様がありません。
騎馬隊登場の映画の中で、未だにこれを越える迫力の映像には、
残念ながら私はお目にかかっていません。
黒澤作品「影武者」や「乱」の美的な映像とはまた違うのです。
これは映画館でみるべき作品です。
出きるだけ大画面でみるべき作品です。
この映画の西田敏行さんのなんと男前だったことか。
これのために、私は『釣りバカ』が認められません。
私の中の西田さんはこの作品で終わってしまいました。
わが母の記 (講談社文芸文庫)
井上靖氏の自伝小説はほぼ全期間を読みました。私は井上氏の母は、彼が少年時代の物語ではとてもしっかりしているような印象を持ちましたが、この本の中では日々老いていく様子が書かれていました。時の移り変わりと、人は誰しも老いていくという悲しさを感じました。少年時代や、他の時期の物語も読んでみると良いと思います。