アンダルシア 女神の報復 プレミアム・エディション [Blu-ray]
話は”スペイン”で発見された日本人投資家の遺体を調べるため
特命を受けた外交官”黒田康作”が調査に乗り出すというもの。
外交官である黒田は司法の力による問題処理を選択することはできないが、
彼の外交手腕により”更なる”犯罪犠牲者を産み出すことのないよう道筋をつけるべく
活躍する。
犯罪者の苦悩を背負いながらも問題の解決に向かう黒田の行動はあまりに凛々しく
切ないが、切なるストーリーは見る人の記憶に残り続けるのも事実。
次回作も是非期待して待ちたい。
尚、特典のメイキングDVDにはスペインロケをドキュメントに追った映像が
1時間30分程度入っているが、キレイなスペインの景色を堪能できるのはもちろん
「織田、福山、伊藤英明」の豪華な三人が談笑している様子なども多く含まれていて
ファンにはたまらないものだと思う。
映画「アンダルシア」の世界観をより深く楽しませてくれるマストアイテムだ。
(以下個人的感想)
監督は「西谷弘」。物語はスペインの”冬”を背景に物語は進行していくが、冬から
連想される寒さや厳しさというイメージ以上に、白い無常感や透明感を表現する監督の
センスを存分に堪能できるのも本作の魅力だろう。
今後は「冬をあますことなく表現できる日本人は誰か?」と問われたら
ド●カムの次くらいに西谷弘の名前を出したいところだ。
そして他人の運命を業として背負う男、外交官”黒田康作”を演じるは、
今なお日本の演劇界の一線で活躍する「織田裕二」
声量はあっても決して役者向きとは思えない彼の篭り声は発したセリフが残り、
後から出たセリフと反響しているかのような耳残り感がある。
散漫な発音は抑揚のなさに繋がり”現代劇しかできない織田”と揶揄され一部に、
演技力のないアクターだと囁かれていたことはファンの人達も決して無視できない
一つの意見だろう。
しかし今作”アンダルシア女神の報復”(前作も良いけど)の主人公「黒田康作」の
役はそんな”織田裕二”の俳優としての特徴をそのまま人物化したかのようなハマリ役だ。
彼はやはり”東京”でも”踊る”でもなかった。黒田康作が演じるは織田裕二なのだ。
残念なのは今回の映画でひとまず黒田シリーズは最後とのこと。
しかし無理は承知で!是非三作目も見たいよ!
みんなでDVDを買おう!
覇王の番人(上) (講談社文庫)
おそらく真保裕一初の歴史物だと思うが、ハードカバー上下二巻の大作を読破した。正直、最初は真保裕一が歴史物なんて書けるのかなと疑いつつ読み進めたためか、いつもとタッチが違うせいか読書スピードが遅く、うまく流れに乗れなかったが、上巻の1/3を過ぎたあたりから引き込まれ、いつもの真保小説と同様に最後まで本を手放すことができなかった。
この本、戦国時代末期から安土桃山時代の世の中を描いているのだが、歴史上は逆賊とされている明智光秀を正義、織田信長を悪として設定し、通説に疑問を呈しているところがまず面白い。織田信長が自らの権力を増やしていくとともに権力を更に増やすことに執着し、部下の武将たち、民衆への気遣いが減っていき、それに対して明智光秀が徐々に懸念を増していく様はストーリーとして自然であり、歴史とも符合するのではないか。さらに面白いのは歴史上あまり明らかでない戦場における忍者たちの活躍が大きく取り上げられているところ。明智光秀は忍者をうまく使って武功を挙げていたとのこと。題名の「覇王の番人」は、想像するに織田信長の番人であった明智光秀、織田信長の後に覇王となった明智光秀の番人であった忍者たちという二重の意味を持たせているのではないか。
灰色の北壁 (講談社文庫)
山岳ミステリー3編が収録されています。
久しぶりに真保裕一らしい作品を読みました。
3編とも登場人物の心理が非常に丁寧に描かれており、単なるミステリー以上の出来栄えになっています。
迫真の登山描写に思わず手に汗を握りますが、なんと真保裕一はインドア派なんですね。
しかも、山を愛する男のストイックで有りながらも熱い思いも実に見事に書き上げています。
実体験が殆ど無いにも関わらずこれだけ迫真に迫る描写ができるのは、そのまま著者の力量を現しているのでしょう。
3編の中で最もお勧めなのは表題にもなっている「灰色の北壁」です。
覇王の番人(下) (講談社文庫)
歴史がブームである。歴女なるものも存在する。そのブームに乗ったわけではないだろうが、著者初めての歴史小説である。主人公は明智光秀。光秀といえば、戦国時代のスターである信長を裏切って殺したというマイナスのイメージが強い。
光秀はなぜ信長を裏切ったのか。この小説では、冷酷な信長に対して、光秀は慈悲深い武将として描かれている。しかし、ある出来事をきっかけに信長がいなければ…と考えるようになる。この作品では、これまでにない歴史解釈をしている。単なる歴史ブームに乗っかった本ではない。この小説を読むと、光秀がまるで正義を貫いた男といった印象を受ける。本当にそうならば、これまでの歴史観がくつがえされることになるだろう。光秀が優れた武将であったことは間違いないようだ。しかし、味方とすべき人物を間違えたことが敗因となった。この小説が真実かどうかは別として、歴史はドラマチックだと改めて思う。特にこの本の時代(戦国時代)は個性豊かな武将が多数現れ、その駆け引きや戦いは非常に面白い。星新一のショートショートに、歴史がここまでドラマチックなのは「歴史の神がいてカギとなる人物に指示を出していたから」と結論付ける作品がある。本書のような小説を読むと、さもありなんと思ってしまうほどこの時代は魅力的である。「歴女」にお勧め。
奪取(下) (講談社文庫)
一巻から読み始めて、皆さんのレビューにある問題のエピローグが気になっ
て、読み進めました。夢オチだろうと予想をしていたのですが、まさかこんな
終末とは。
著者は、本当にこれが言いたくって、ここまで紙や印刷の取材と研究を続けて
きたのかと、驚きました。まあ、本当は愛嬌でエピローグはつけたのでしょう
が、なくてよかったと思います。真剣に読めば(私は斜め読みでしたが)、紙
と印刷の知識が身につくこと間違いなしです。結果を知りたくて、先に先に読
み進めたい本でした。