TOMITA ON NHK〜冨田勲 NHKテーマ音楽集
冨田氏がNHKの番組のために書いた楽曲を30曲以上収録。古いものでは昭和31年のものから、「きょうの料理」のようにいまだ現役のものまで、バラエティに富んだ構成になっている。
ただ、「きょうの料理」などは既に多くの日本人にとって、番組を即座に想起させるものとして脳内にこびりついているので、人前で堂々と聴くのは少し、いや、かなり恥ずかしいかもしれない。
PLANETS ZERO ~Freedommunesession with Dawn Chorus
冨田勲のアルバム『DAWN CHORUS』に収められた“ドーン・コーラス(暁の合唱)”が鳥の囀りのような音で収録されていたのに比べ、本アルバムでは比較にならないほどダイナミックな音で聴かれる。
この暁の合唱は、8月初めに浅間山麓で収録されたもので、他の電波の干渉やノイズを丁寧に除いてアルバムに収められた(トラック1,7,8)。
少し大きめの音量で聴くと、耳に刺さるほどエネルギッシュ。
本間千也によるトランペット(トラック2,7,8)の美音はたまらない。
トランペットを吹く息に全く乱れが感じられず、音が極めて滑らかに伸びそして消えてゆく。
原曲であるホルストの『惑星』の聴きどころである「木星」はトラック6と7に分けられ、トラック7では暁の合唱に続いて「木星」の原曲ではホルンが奏でるパートをトランペットが歌い上げる。
先に発売された『PLANETS Ultimate Edition』とは異なり天王星と海王星が省かれているものの、トラック2とトランペットの追加だけでも本アルバムは素晴らしい出来。
それでも贅沢を言わせてもらって、天王星と海王星が収録されていればとの思いから、敢えて☆4つ。
惑星
クラシックの枠をはみ出していましたが、当時は斬新で、とても未来的なイメージを感じることができました。今聞いてもあまり古臭さを感じない、反対に当時のモーグでここまで音が分厚くなるのかと思うと驚きます。
もともと長い曲ですが、富田勲の惑星はあっという間に終わります(時間も短いですが)。
月の光
モーグ・シンセサイザーの可能性をリスナーに届けた冨田勲のデビュー・アルバムにあたります。1974年の発売当時、この「未来」の機械で創る音楽に対して賛否両論が巻き起こりました。今では全く議論の余地のない評価ですが、当時はシンセサイザーに対するある種の偏見があったのも事実です。多チャンネル・テープレコーダーでの録音もまた昭和という時代を感じさせます。
冨田勲が素晴らしい作曲家として活躍し、多くの作品を残していたからこそ、シンセサイザーの可能性を探るためにドビュッシーをテーマに選んだのでしょう。この色彩感覚に溢れる印象派の代表とも言えるピアノ曲をオーケストレーションのように扱い、従来の既存の楽器の概念を超えたシンセサイザーの音色で彩ることで、未来の音楽の姿を見せられた思いがしました。
ドビュッシーの原曲のピアノ曲も素敵ですが、オリジナル曲の良さを最大限にいかしてここに新しい音楽が提示されています。冨田勲の創る音楽世界観がしっかりと構築されているからこそ、世界中のリスナーに支持される音楽が創り得たわけでしょう。最初にアメリカのRCAが着目したという逸話から、その斬新性と普遍性が感じられます。
「夢」「月の光」「アラベスク第1番」「亜麻色の髪の乙女」など大好きな曲が素敵なドレスに衣装替えをして登場した思いがしたものです。
名映画評論家であり、オーディオ評論家の故荻昌弘氏の解説を懐かしい思いで再読しています。素晴らしい音楽は時代を超えて生き続けていくという見本のようなアルバムでしょう。